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科学五輪メダリストに聞く 学習法は?最終目標は?

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NIKKEI STYLE

科学の知識を深め、発想を磨き合い、課題に挑む「サイエンスアスリート」から学ぶ新企画。今回は、世界の高校生が切磋琢磨(せっさたくま)する「国際科学オリンピック(科学五輪)」のメダリストにアンケートし、自分にとっての科学や学習法について答えてもらった。「興味をもったらまず動いてみる」。回答からはそんな共通点が浮かんでくる。(前回記事は「君も『サイエンスアスリート』 科学五輪で10代躍動」

科学五輪は、数学、化学、生物学、物理、情報、地学、地理の7分野それぞれで毎年開催されている。2020年の生物学、21年の化学、23年の物理(コロナ禍のため22年から延期)、数学の4大会は日本がホスト国だ。国内選考を経た各国・地域の代表が理論や実験の試験にのぞみ、成績上位からおおむね1割に金、次の2割に銀、次の3割に銅の各メダルが授与される。

20年7月実施のアンケートでは、表に示した質問などに回答してもらった。以下は受賞分野や世代の異なる7人のメダリストの声だ。

児玉大樹さん(92年数学五輪「金」)

児玉大樹(こだま・ひろき)さんは、筑波大学付属駒場高校2年だった91年の数学五輪スウェーデン大会で銀メダル、翌年のロシア大会で日本初の金メダルを獲得した。東京大学から東大大学院に進み、2002年に博士号(数理科学)を取得。現在は東北大学の材料科学高等研究所(AIMR)助教や理化学研究所の客員研究員として「グラフの構造の幾何的性質と材料の性質の関係」などを研究している。数学五輪の経験を「若いときから海外の人々や文化に触れられてよかった」と振り返る。

数学を「日常的なもの」と表現するほど根っからの数学好きで「数学のない人生は考えられない」とも。理想の未来も「数学をして暮らしていくこと」だ。憧れの科学者はノーベル物理学賞を受賞した米国の学者で、「ご冗談でしょう、ファインマンさん」などの著作でも知られるリチャード・ファインマン(1918~88)。「幅広い興味とわかりやすい語り口にひかれる」のが理由だ。ただ、愛読書は「特になし」。読書の習慣はあるが「あまり1冊に固執しない」というのも、そのときどきに抱く自分の興味を大切にしているからかもしれない。

かつての自分に運動の習慣を求めるあたり、多くの同世代と同じように健康にかかわる数値も気になるようだ。

伊藤哲史さん(95年情報五輪「金」)

伊藤哲史(いとう・てつし)さんは、筑波大付属駒場高2年だった94年に情報五輪スウェーデン大会で銀メダルを獲得し、さらに翌年のオランダ大会では金メダルを受けた。情報五輪では日本初の「金」。東大大学院で03年に博士号(数理科学)を取得。現在は京都大学大学院の理学研究科数学教室で准教授を務める。情報五輪への出場は「世界中にはもっとすごい人がたくさんいるということを知るきっかけになった」という。

自身の研究はもちろん、オンラインによる公開講座など数学の楽しさを伝える活動にも熱心に取り組んでいる。アンケートでは、最終目標も、憧れの科学者も、愛読書も「特になし」との回答だったが、学習法など中高生へのメッセージからは「好きなこと」へのこだわりが伝わってくる。「自分が好きだと思えることを見つけて、自分が納得するまで考え抜くしかない」との思いに続けて「一見遠回りに見えても結局はそれが一番の近道ではないか。いいかげんな気持ちで身につけた知識は、すぐに抜けてしまう」と指摘する。

過去の自分への助言でも「自分の好きなことに取り組む」ことを改めて求めるほど。学びにとって最も大切なものは何か、そんな問いへのストレートな答えにもなっている。

高倉理さん(07年物理五輪「金」)

高倉理(たかくら・さとる)さんは灘高校3年だった2007年、イランで開かれた物理五輪で金メダルを獲得した。物理五輪の日本代表では初めてで、前回記事に登場した村下湧音さんとのダブル受賞だった。11年に大阪大学を中退し、阪大大学院に飛び級。17年に宇宙地球科学専攻で博士号(理学)を取得した。現在は東大国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の特別研究員などを務め、宇宙の全方向からほぼ均等に届く電磁波「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」を精密観測する国際共同実験に参加。宇宙誕生の謎に迫る最前線のひとりだ。

物理五輪を経験したことで「自分の才能を生かして物理学の発展に貢献したい」との志を抱いた。物理学は真の法則へ我々を導く「コンパス」であり「手探りに様々な理論を考え、それが正しいかどうか実験で検証する」ことのくり返し。根気の要る今の研究にも「最先端の研究活動に必要な能力は答えのある問題を解くことだけではない」との思いで挑み続けている。

憧れの科学者は、1964年にCMBを発見し、のちにノーベル物理学賞を受けた米国のアーノ・ペンジアス氏とロバート・ウィルソン氏。その発見が「ノイズの原因を突き詰めた結果である点が、自分の仕事と相通じる」と感じている。

オススメの学習法は「授業を聞くときも教科書を読むときも常に何か質問することがないか考える」こと。さらに「相手がどう論理を組み立てているのか、自分はどう考えるのかを整理し、相違点を議論する」ことで、より確かな知見を身につけることができるという。

栗原沙織さん(10年生物学五輪「金」)

栗原沙織(くりはら・さおり)さんは北海道札幌西高校2年だった10年、韓国で開かれた生物学五輪で「金」に輝いた。東大から東大大学院に進み、生物科学を専攻。19年に修士号(理学)を取得した。現在は民間企業で業務改善のためのデータ分析などを担当している。

「生物という対象の手に負えないほどの複雑さと多様性に圧倒されるばかり」だが、そこに科学的な探究の手がかりを与えてくれるのが生物学だという。自身の目標に「生物多様性の魅力の普及」を掲げるのも「生命現象の真の面白さは多様性の中にあると信じている」からだ。

生物学五輪への出場は「面白い人たちとのつながり」を生み、代表同期を中心に現在も一緒にセミナーを開くような仲間を得た。憧れの科学者が「特になし」というのも、多様な一人ひとりの中に面白さをみるからなのかもしれない。

学習の第一歩は「対象に興味を持つこと」だと考える。中高時代は「もともと好きだった理系の勉強はもちろん、苦手だった歴史や古文も、(その教科を)好きな人の話を聴いたり、背景を調べたりして興味を持ち、楽しんで学ぶことができた」という。

野田和弘さん(10年地学五輪「金」)

野田和弘(のだ・かずひろ)さんは、天文や気象、地質などがテーマとなる地学五輪の日本初代金メダリスト。広島学院高校3年だった10年のインドネシア大会に出場した。東大から東大大学院に進み天文学を専攻。17年に修士号(理学)を取得した。「(地学五輪で)見聞きしたものへの興味がきっかけとなり、大学や大学院での研究につながった」という。現在は日立製作所の研究開発グループで「流体解析を生かした機械関係の研究開発」に取り組んでいる。

野田さんにとっての科学は「楽しみ」。「生きている中での疑問を解決していくことは、パズルを解くのに似た楽しさがある」。尊敬するのはドイツの天文学者、ヨハネス・ケプラー(1571~1630)。「現代のような道具もない時代に、不遇なときも地道に研究を続け、現代にも残る成果を残した」ことに驚く。愛読書「嫌われる勇気」では「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」との一節が好きだ。

勉強に行き詰まったときは「席から立ちあがって歩きながら考えると、頭の中が整理される気がする」と、頭のために体を動かすことの効用を説く。過去の自分にアドバイスを送るなら「勉強や部活以外にも、世の中には面白いことが多くあるように感じる。気になったことはとりあえずやってみたほうが後悔しない」と伝える。若者が自分の可能性をせばめないための第1法則かもしれない。

平賀美沙さん(13年地理五輪「銅」)

平賀美沙(ひらが・みさ)さんは、地形図や写真、グラフなどから情報を読み取り、分析する力が問われる地理五輪の銅メダリスト。桜蔭高校3年だった13年、日本初開催となった京都大会に出場した。生徒自身が英語の出題に英語で解答することが義務づけらた地理五輪は、引率者による翻訳が認められる他の分野に比べ、英語圏以外の代表にとってハードルが高い。暗記科目と思われがちな地理だが「(五輪挑戦で)手持ちの知識と現地での発見を組み合わせて総合的に考える力を鍛えられた。国際的な視野も広がった」という。

平賀さんは18年に東大工学部を卒業し、20年3月に東大大学院の社会基盤学専攻で修士号(工学)を取得。総合建設会社に入社し、技術部の新人として一歩を踏み出したばかりだ。

江戸期に全国を測量した伊能忠敬(1745~1818)を尊敬するのは「測量や地図の功績に加え、高齢になってからも学び続ける姿勢」があったから。医学部出身で「壁」「砂の女」などの作品で知られる作家、安部公房(1924~93)は「独特な世界観に没入できるのが魅力」だ。

大学では「受験の学力が高い人だけでなく、いろいろな分野で優秀な人がたくさんいる」と感じた。そのこともあって過去の自分には「あまり大学受験のことなど心配しすぎず、もっと好きなことを突き詰めて学んでほしかった」という。同じような悩みを抱えている今の高校生へのメッセージでもある。

林杏果さん(14年化学五輪「銅」)

林杏果(はやし・きょうか)さんは豊島岡女子学園高校3年だった14年、化学五輪ベトナム大会で銅メダルに輝いた。20年春に早稲田大学先進理工学部を卒業し、京大大学院工学研究科に進学。専攻は合成・生物化学だ。化学以外の分野にも学びが広がるにつれ「別々の学問だと思っていたもの同士がつながっていくことが、学問の楽しさだと気づいた」と喜び、今は「学問の垣根をなくしていくことが科学を豊かな世界にする鍵だ」と考えている。

「日本の女性科学者の先駆的存在」として米沢富美子(1938~2019)にひかれる。自伝「まず歩きだそう 女性物理学者として生きる」を子どものころに読み、心を動かされた。「まだまだ女性の少ない科学の世界で、自分も逆境を感じることがしばしばある。そのようなとき、偉大な先輩がどのように世界を見ていたか、非常に参考になる」という。

学習法については「自分の学びやすい形で始めることが長く続ける秘訣ではないか」と指摘。解説が自分の頭に入りやすい本や専門家を、早い段階で見つけることを勧める。かつての自分に向け「他人によく教えられる・伝えられることこそが学びのゴール」と、的確なアウトプットを意識することを求めた言葉には、科学の面白さを人と分かち合うことへの希望も込められているようだ。

(天野豊文)

◇  ◇  ◇

次回から科学の学びを文化・スポーツ・ビジネスなど、さまざまな世界で生かしているサイエンスアスリートたちのインタビューをお届けします。

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