科学五輪メダリストに聞く 学習法は?最終目標は?

国際科学オリンピックの中で日本が初めてホスト国をつとめた2003年国際数学オリンピックの表彰式(東京・代々木)=数学オリンピック財団提供
国際科学オリンピックの中で日本が初めてホスト国をつとめた2003年国際数学オリンピックの表彰式(東京・代々木)=数学オリンピック財団提供

科学の知識を深め、発想を磨き合い、課題に挑む「サイエンスアスリート」から学ぶ新企画。今回は、世界の高校生が切磋琢磨(せっさたくま)する「国際科学オリンピック(科学五輪)」のメダリストにアンケートし、自分にとっての科学や学習法について答えてもらった。「興味をもったらまず動いてみる」。回答からはそんな共通点が浮かんでくる。(前回記事は「君も『サイエンスアスリート』 科学五輪で10代躍動」

科学五輪は、数学、化学、生物学、物理、情報、地学、地理の7分野それぞれで毎年開催されている。2020年の生物学、21年の化学、23年の物理(コロナ禍のため22年から延期)、数学の4大会は日本がホスト国だ。国内選考を経た各国・地域の代表が理論や実験の試験にのぞみ、成績上位からおおむね1割に金、次の2割に銀、次の3割に銅の各メダルが授与される。

20年7月実施のアンケートでは、表に示した質問などに回答してもらった。以下は受賞分野や世代の異なる7人のメダリストの声だ。

児玉大樹さん(92年数学五輪「金」)

児玉大樹さん(本人提供)

児玉大樹(こだま・ひろき)さんは、筑波大学付属駒場高校2年だった91年の数学五輪スウェーデン大会で銀メダル、翌年のロシア大会で日本初の金メダルを獲得した。東京大学から東大大学院に進み、2002年に博士号(数理科学)を取得。現在は東北大学の材料科学高等研究所(AIMR)助教や理化学研究所の客員研究員として「グラフの構造の幾何的性質と材料の性質の関係」などを研究している。数学五輪の経験を「若いときから海外の人々や文化に触れられてよかった」と振り返る。

数学を「日常的なもの」と表現するほど根っからの数学好きで「数学のない人生は考えられない」とも。理想の未来も「数学をして暮らしていくこと」だ。憧れの科学者はノーベル物理学賞を受賞した米国の学者で、「ご冗談でしょう、ファインマンさん」などの著作でも知られるリチャード・ファインマン(1918~88)。「幅広い興味とわかりやすい語り口にひかれる」のが理由だ。ただ、愛読書は「特になし」。読書の習慣はあるが「あまり1冊に固執しない」というのも、そのときどきに抱く自分の興味を大切にしているからかもしれない。

かつての自分に運動の習慣を求めるあたり、多くの同世代と同じように健康にかかわる数値も気になるようだ。

伊藤哲史さん(95年情報五輪「金」)

伊藤哲史さん(京都大学高等教育研究開発推進センター提供)

伊藤哲史(いとう・てつし)さんは、筑波大付属駒場高2年だった94年に情報五輪スウェーデン大会で銀メダルを獲得し、さらに翌年のオランダ大会では金メダルを受けた。情報五輪では日本初の「金」。東大大学院で03年に博士号(数理科学)を取得。現在は京都大学大学院の理学研究科数学教室で准教授を務める。情報五輪への出場は「世界中にはもっとすごい人がたくさんいるということを知るきっかけになった」という。

自身の研究はもちろん、オンラインによる公開講座など数学の楽しさを伝える活動にも熱心に取り組んでいる。アンケートでは、最終目標も、憧れの科学者も、愛読書も「特になし」との回答だったが、学習法など中高生へのメッセージからは「好きなこと」へのこだわりが伝わってくる。「自分が好きだと思えることを見つけて、自分が納得するまで考え抜くしかない」との思いに続けて「一見遠回りに見えても結局はそれが一番の近道ではないか。いいかげんな気持ちで身につけた知識は、すぐに抜けてしまう」と指摘する。

過去の自分への助言でも「自分の好きなことに取り組む」ことを改めて求めるほど。学びにとって最も大切なものは何か、そんな問いへのストレートな答えにもなっている。

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