質量は地球の40倍でほぼ大気なし 不思議な岩石惑星

日経ナショナル ジオグラフィック社

「この領域には、海王星程度の質量の惑星が本当に見つからないのです」とフォートニー氏は言う。

TOI-849bの重力による主星のふらつきを、チリのラ・シヤ天文台の「高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)」を使って観測したところ、この惑星の質量は海王星の2倍以上あることが判明した。大きさを考慮すると、TOI-849bの密度が非常に高いことがわかる。水素とヘリウムからなる薄い大気の層があるかもしれないが、これだけの質量がある惑星がもつはずの大気の量に比べれば、はるかに少ない。

「この惑星は、金属とケイ酸塩と水、それに、ごくわずかな大気からできていると考えられます」とヘレド氏は言う。

遠い過去の遺物?

アームストロング氏らは、これらの奇妙な性質から、この天体は木星よりも巨大に成長するはずだったガス惑星のコアであると結論している。太陽系の巨大ガス惑星にも、岩石や珍しい物質からなる高密度のコアがある可能性が高いが、どのコアの質量もTOI-849bには遠く及ばないと考えられている。

「木星のコアの推定質量は、驚くほど不確実です」とアームストロング氏は言う。「最近の研究では、最大で地球の質量の約25倍だと示唆されています。TOI-849bは、それよりもさらに重いのです」

現在の惑星形成理論によると、惑星は、生まれたての恒星の周囲に渦巻くガスと塵(ちり)の円盤の中で、岩石や氷の小さな塊を核にして成長すると説明されている。地球のように、少量の物質を集めてできた小さな惑星もあれば、木星や土星のように、大量のガスを集めて厚い大気をまとった巨大惑星もある。

惑星が成長して地球の10倍程度の質量になると、「暴走的ガス捕獲」と呼ばれるプロセスが始まり、惑星の重力によって周囲の水素やヘリウムを急速に捕獲するようになるとアームストロング氏は説明する。地球の40倍もの質量のコアがあれば、途方もない量のガスをまとうはずだが、現在のTOI-849bの姿はそのようにはなっていない。

「TOI-849bのような惑星は非常に珍しいですが、現に存在しています。こうした惑星が、なぜ、どのように形成されたかを考えなければなりません」とヘレド氏は話す。

1つの可能性としては、TOI-849bが恒星の周りにあるガスを捕獲し尽くし、これ以上集められなかったことが考えられる。第2の可能性は、TOI-849bはかつて巨大惑星の核だったが、主星からの距離が近すぎるなどの理由で大気を失ってしまったというものだ。しかし、どのようにして数十億年の間に地球数百個分もの質量のガスを失ったのかは謎のままだ。

第3のシナリオは、この惑星が形成された当初に、同じくらいの大きさの天体に衝突されるなどの激変が起きて、岩石からなるコアが大きくなると同時に、大気がはぎ取られたというものだ。

「TOI-849bがホット・ネプチューン砂漠にあることは重大な手がかりになると思います」とアームストロング氏は述べる。「私自身は、なにか非常に珍しいことが起きたのではないかと考えています」

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年7月3日付の記事を再構成]

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