作物あさり、ヒトの子さらう チンパンジー保護の葛藤

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/8/2
ナショナルジオグラフィック日本版

ウガンダ西部のキャマジャカ村で、空き家の窓に映る自分たちの姿を見つめるチンパンジーの群れ。この家に住んでいたセマタ家の息子は2014年7月にチンパンジーに殺され、一家は村を去った(PHOTOGRAPH BY RONAN DONOVAN)

アフリカ東部のウガンダでは、森の生息地が減少するにつれ、腹をすかせたチンパンジーが作物をあさり、人間の子どもをさらうようになった。ナショナル ジオグラフィック8月号では、住民たちと保護の対象である希少な動物との関係をリポートしている。

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「私が畑を耕しているときに、チンパンジーがやって来ました」と、17年初めに話を聞いたとき、母親のンテゲカ・セマタは振り返った。彼女は幼い4人の子どもの面倒を見ながら、きつい農作業をこなしていた。そして子どもたちに水を取ってあげようと背を向けたとき、チンパンジーが2歳の息子の手をひっつかみ、走り去ったのだ。男の子の叫び声を聞いて村人たちが駆けつけ、追いかける母親を手助けした。しかし、そのチンパンジーは粗暴で力が強く、あっという間にその子に致命傷を負わせた。

ムジュニは病院に運ばれる途中で息を引き取った。

ウガンダ西部の山の尾根に沿った小さな土地で細々と生計を立てるンテゲカ・セマタの家族の暮らしは、ただでさえ苦しかった。自分たちが食べる分と、わずかな現金収入を得るための作物を育てるのがやっとだった。チンパンジーはセマタ家が暮らすキャマジャカ村をうろついては、バナナやマンゴー、パパイアなど、食欲をそそられるものを探し回り、食べあさっていた。

キャマジャカ村の状況は、住民にとってもチンパンジーにとっても、依然として不安定だ。人間の子どもが襲われるケースは続発していて、この地域だけで少なくとも3人が死亡し、6人ほどが負傷したり、間一髪で危険を逃れたりした。こうした襲撃の主な原因は、ウガンダ西部のチンパンジーの生息地が失われていることだと考えられる。国立公園や保護区の外の森林が農地に変えられ、建材や燃料のために樹木が伐採されているのだ。

ウガンダ野生生物保護庁(UWA)はチンパンジーをめぐるこうした状況を認識しているものの、同庁の権限ではチンパンジーの保護はできても、私有の森林の利用は制限できないのだ。「残念ながら、こうした地域の伐採を防ぐのは不可能です」と、UWAのサム・ムワンダ長官は言う。

必要なのは、常にチンパンジーへの警戒を怠らないよう、住民の「意識を高める」ことだとムワンダは話す。そこでUWAはカガディ県に3人のレンジャーを配置し、チンパンジーを監視したり、村人にチンパンジーと共生する方法を学ばせたりするための出先機関を開設した。

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