あの頃の思い出に浸って 「応答せよ」イ・ウジョン脚本家で見る韓国ドラマ(5) ファミリー&ラブドラマ編

「応答せよ1997」 (C) CJ E&M CORPORATION
「応答せよ1997」 (C) CJ E&M CORPORATION
Paravi

動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信されている作品の中から、注目の脚本家にスポットを当てて紹介していく特集の第5弾のテーマは"ファミリー&ラブドラマ"。韓国ドラマで幅広い層に好まれる大人気ジャンルはやはりファミリードラマ。特に50話前後で描かれていく波乱万丈(はらんばんじょう)のドラマは、見始めたらやめられない吸引力がある。

「黄金の私の人生」Licensed by KBS Media Ltd.(C)2017 KBS.All rights reserved/STUDIO DRAGON CORPORATION

だいたいが財閥一家と庶民の一家という対照的な家族が出てきて、その間での恋だったり因縁や葛藤が繰り広げられるのだが、このジャンルで定番のヒットを飛ばしているのが「華麗なる遺産」(2009年)、「いとしのソヨン」(2012~2013年)などのソ・ヒョンギョンだ。彼女の近年の大ヒット作「黄金の私の人生」(2017~2018年)では、格差社会の中で、努力しても報われなかったヒロインの思わぬ出生の秘密が明らかになり財閥一家の娘として新たな人生を歩み始めるも、さらなる試練が彼女を襲い~という波乱の展開。そこにパク・シフ演じる財閥の御曹司とのラブストーリーが絡んでいく。

兄、妹、両家の父親、母親と、主人公たちだけでなく、各世代の人が投影された人物像が出てくるので、どの世代が見ても誰かには感情移入しながら見進めることができ、そのうちに、この真相はいつ明らかになるの?誤解はいつ解けるの?すれ違った気持ちはどうなっちゃうの~?とどっぷりとこの家族の物語にハマっていく。全52話あるので、定番の面白さと、怒涛(どとう)の展開で連続ドラマの醍醐味が味わえる。

一方、波乱万丈とはちょっと違うが、温かさと感動、ユーモアを盛り込んで他の追随を許さないこだわりの作品群を送り出しているのがイ・ウジョン。このイ・ウジョンという人は、大人気バラエティー「花よりおじいさん」、「三食ごはん」などの各種シリーズや「1泊2日」なども手掛け、芸能バラエティーでもドラマでも大ヒットを飛ばす稀有な人なのである。

ドラマではシン・ウォンホ監督と組んだ「応答せよ」シリーズが代表作。「応答せよ1997」(2012年)、「応答せよ1994」(2013年)、「恋のスケッチ~応答せよ1988~」(2015~2016年)という一連のドラマで国民的なレトロブームを呼び起こした。年代がタイトルになっているように、誰もが経験した時代背景を利用して、当時の思い出を共有できるようなエピソードをつづっていくことで幅広い年代の視聴者はもちろん、新世代俳優たちの登場で、若い層からの支持も集めた。

シリーズ最初の「応答せよ1997」は、当時韓国で大人気だった2大アイドルグループを追いかける女子高生たちの思い出を、幼なじみとの恋と友情の行方を交えて描いているが、現在どこかのK-POPグループのファンであるなら、へぇ、昔のファンはこんなふうに活動していたのか! と驚きと共感を持って見ることができるだろう。シリーズ第2弾の「応答せよ1994」は、2013年と1994年を行ったり来たりしながら、主人公たちが暮らしている下宿で起こるエピソードがメインで描かれていく。地方から東京に出てきた経験がある人は「大学時代ってああだったなあ」「地方から出てきて、戸惑ったよねえ」と、いろいろ思い出してしまうに違いない。加えて、「ヒロインの家で下宿していた5人の男たちの中で最終的に彼女と結婚した相手は誰なのか?」という部分が巧みに隠されているので、それが誰なのかを推理していく面白みもある。

「応答せよ1994」 (C) CJ E&M CORPORATION, all rights reserved.

ヒロインは、亡くなった兄の親友で、家族のようなつきあいのある男のことを好きになるのだが、「応答せよ1997」と同じように、「今まで家族のようだった男女がお互いを意識しだす瞬間」という微妙な感じをうまく描いていて胸がキュンキュンし、このドラマ最大の見どころになっている。いつもは超ぶっきらぼうで、雑に扱っていた親友の妹に対し、肝心な時にふと見せる優しさに持っていかれること請け合いだ。

そしてソウルオリンピックが開かれた年を背景にした「恋のスケッチ~応答せよ1988~」と続くわけだが、シリーズを貫いているのは、とくに悪い人も登場せず、ある意味、こうあってほしいなあという人間関係におけるファンタジーが描かれていることだ。そしてイ・ウジョンがバラエティー番組の作家出身だけに、ドラマに織り込まれてくるユーモアがまた温かみを添えている。ただでさえ、情が薄れている現代、しかもソーシャルディスタンスを守らねばならない今だからこそ、せめてドラマの中だけでもこのシリーズが醸し出す懐かしさに浸ってほしい。

(文:韓流ナビゲーター 田代親世)

[PlusParavi(プラスパラビ) 2020年7月8日付の記事を再構成]

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧