手に汗握る緊張感、権力と対決 「サイン」キム・ウニ脚本家で見る韓国ドラマ(4) ミステリー・サスペンス編

「サイン」(C) SBS
「サイン」(C) SBS
Paravi

動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信されている作品の中から、注目の脚本家にスポットを当てて紹介していく特集の第4弾のテーマは"ミステリー・サスペンス"。韓国ミステリーに外れなし! それほどこのジャンルはどれも秀作ぞろいと言い切れる。そんな中にあってひときわ脚光を浴びている脚本家がキム・ウニだ。

キム・ウニは韓国で初めて法医学者と国立科学捜査研究院にスポットを当てたメディカル捜査ドラマ「サイン」(2011年)で頭角を現した。「生きた人間は嘘(うそ)を言い、死んだ者が真実を語る」。この信念のもと、死の原因を明らかにする法医学者たちの活躍と苦悩がテーマになっている作品だ。気難しくとげとげしい天才法医学者と人懐っこく情熱的な新人法医学者、そこに熱血刑事と、俗物と呼ばれながらどんどん正義の検事となっていくデコボコカップルも加わり、彼らが権力の壁にぶつかりながらも真実を暴くべく、真っ向から権力に対決していく姿が、手に汗握る緊張感とともにスリリングに描かれていく。

「サイン」(C) SBS

第1話からアイドルスターが謎の死をとげるというK-POPファンにも興味深い事件でスタートし、連続ひき逃げ事件や、企業内での連続不審死など、大小さまざまに登場する事件のエピソードがどれも一筋縄ではいかない内容で興味深く、それぞれの事件が主人公たちに絡んでくるという巧みな脚本になっている。よく日本のドラマにあるような一話完結方式のメディカルドラマや刑事ドラマの概念を覆す面白さで、スピーディーな展開と緊迫感あふれる演出で視聴者の好奇心を刺激していく。

そして最初の事件が最後までかかわってきて、ラストは「ええーっ!」と驚く衝撃の展開なのだ。ミステリー、サスペンス、ヒューマンドラマの要素が満載で、とにかくストーリー構成の緻密さ、ドラマとしての完成度の高さにしびれる傑作になっている。なんと言ってもキム・ウニの想像力とどんでん返しっぷりに舌を巻く。

「シグナル」(C)2016 Studio Dragon & ASTORY

そしてさらにそこに感動が加わったのが、彼女の代表作と言える「シグナル」(2016年)だ。時空を超えて無線機でつながった現在と過去の刑事たちが、力を合わせて未解決事件を解決していくというサスペンスドラマ。時を超えてそれぞれの刑事が会話することによって事件の手がかりが生まれ、それぞれの時代で無念に終わるはずだった結果が1つ、2つと変わっていくうちに、何のために時代を超えて無線がつながったのか、なぜこの2人だったのか、その理由が徐々に浮かび上がってくるのだが、そのゾクゾク感がたまらない。

興奮レベルの面白いドラマで、1話からがっしりと心をつかまれ、見始めたら気になってやめられなくなること必至だ。このドラマも非常に計算された緻密な構成の脚本が光っているが、それ以上に、訴えているメッセージが胸を打つ。金やコネや力があっても罪を犯したら罰せられるべきだという愚直なまでにまっとうな思いを持った熱い刑事が、長いものに巻かれず、決してあきらめずに社会悪に立ち向かっていく切実な思いが感動を呼ぶ。金もコネも力もない人間が理不尽な目に合う現代韓国社会への皮肉にもなっている。

キム・ウニが大衆性と作品性を兼ね備えているエンタメ作品の書き手なら、マ・ジンウォンは、より専門的でハードな内容を取り扱っている脚本家と言える。

「ボイス~112の奇跡~」(C)STUDIO DRAGON CORPORATION

その代表作「ボイス~112の奇跡~」(2017年)は本格サイコスリラーというジャンルだ。愛する妻を猟奇的な犯人に殺された刑事と、どんな小さな音でも聞こえてしまう特殊聴覚を持つ女性ボイスプロファイラーが、"ゴールデンタイムチーム"という112通報センターに勤務し、連続殺人犯を追跡し事件を解決していく過程を描いた作品。生と死のはざまにある被害者からの通報に耳を傾け、音を手掛かりに場所を特定し、犯人の心理状況を推察して被害者を救出するという新鮮な手法を用いて、隊員たちがサイコパスらが起こしていく猟奇的事件の数々に挑んでいく。

好評を得てシーズン3まで作られ、2019年夏に日本でも唐沢寿明、真木よう子、NEWSの増田貴久出演でリメークされたので印象に残っている方も多いだろう。「ボイス」は大衆性とは少々距離がある残酷な凶悪犯罪を扱うドラマ。毎シーズン、実際に起きた事件を反映して、犯罪に対する警戒心を高めるエピソードが登場し、見るものの緊張を誘う描き方になっている。

いずれにしても、スリルとサスペンスを求めるならこれらの作品であれば十二分な満足感を得られることは間違いない。

(文:韓流ナビゲーター 田代親世)

[PlusParavi(プラスパラビ) 2020年7月1日付の記事を再構成]

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