コロナで変わる雇用環境 人材確保はスキル重視にダイバーシティ進化論(村上由美子)

2020/7/25
画像はイメージ=PIXTA
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新型コロナウイルス感染拡大による多大な経済影響が世界中で明らかになっている。特に深刻なのは経済社会活動の制限に起因する失業問題だ。第2波がない場合でも世界の失業率は2020年の末までに9.4%に達すると経済協力開発機構(OECD)は予測している。コロナの雇用におけるインパクトは金融危機よりもはるかに大きく、このままではOECDのほとんどの加盟国で21年までに1人あたりの実質所得が16年のレベルまで落ち込む。

少子化を背景に労働力供給が逼迫していた日本では、欧米のように失業率が急激に悪化する状況では今のところない。しかし、21年度の採用計画を見直す企業が出てくるなど、今後の雇用環境には暗雲が垂れこめる。加えて失業率には反映されない休業者や求職を諦めた人達が増加している可能性もある。この現状は就職氷河期の苦い経験を彷彿(ほうふつ)とさせる。

バブル経済崩壊後の経済停滞期に学校を卒業した世代は就職難のため、非正規雇用のまま不安定な雇用形態を強いられた人が多い。20年以上たった今でも、安定的な収入を得ることができず、独身者が多いのも、この世代である。高度な教育を受けても、卒業のタイミングが不景気と重なれば、キャリア形成の扉が閉ざされるという理不尽な状況を生んだ原因は何か。

背景には、新卒一括採用という日本企業固有の雇用慣習があった。しかしコロナ以前より、年功序列から成果主義へ移行し、通年採用や中途採用を積極的に始めた企業が増えていた。予期せずリモートワークを始めた企業の中には、今後もリモートワークを続け、ジョブ型雇用制度を導入する動きも見られる。画一的なアプローチから脱却し、個々の多様な状況に柔軟に対応しつつ、労働生産性を高めようとする試みは、少しずつ進んでいる。

これまでとは異なり、今回のコロナ危機で就職難に直面する若者を活用できる下地が日本経済にはでき始めている。職場でのデジタル化が急速に進む局面で、デジタルリテラシーの高い人材の確保は企業の死活問題になりうる。卒業年次や年齢に関わらず、スキルで付加価値を生み出せる人材を採用・育成していく企業が今後の日本経済の主流になるだろう。ピンチはチャンス。コロナ危機は、日本の労働環境の変革を十倍速で推し進める大きな機会だ。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2020年7月20日付]

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