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アジアの国・地域は日本にとってライバルといえる存在になってきた

アジアの国・地域は日本にとってライバルといえる存在になってきた

台頭してきたアジア経済が日本のライバルになりつつある。コロナの影響で苦境に直面しているものの、成長への歩みは止まっていない。今回紹介する『アジア資本主義』は、中国やインド、東南アジアなどで豊富な取材経験のある金融ジャーナリストが政治経済の最前線を追った一冊。ビジネスパーソンの「必須科目」となったアジア経済の知識をアップデートするのに最適の参考書といえよう。

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小平龍四郎氏

小平龍四郎氏

著者の小平龍四郎氏は日本経済新聞編集委員。1988年に早稲田大学第一文学部を卒業、同年日本経済新聞社に入社。証券部記者として「山一証券、自主廃業」や「村上ファンド、初の敵対的TOB」などを取材しました。欧州総局、経済金融部編集委員、論説委員、アジア総局編集委員を経験しています。著書に『企業の真価を問うグローバル・コーポレートガバナンス』があります。

グローバルよりリージョナル

中国が経済規模で世界2位の大国であることは広く認識されています。それでは東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドについては、どうでしょう。高成長のイメージはあるものの、まだまだ欧米や日本よりも未熟な新興国と考えがちではないでしょうか。著者はそのような認識は甘いと断言します。「もはや、アジアに対して上から見下ろす態度をとるわけにはいかない。各国が高成長を遂げてこられた理由を、私たちが謙虚に学ぶべきではないか」と問いかけます。

金融・証券分野の取材経験が豊かな著者は、まずファンドの動き方を分析することからアジア・ウオッチを始めます。ファンドとは、投資の専門家が資本市場からお金を集めて企業や事業、プロジェクトに投じ、価値が高まったところで売却し、リターンを出資者に返還する仕組みです。成長資金を提供している新興ファンドの一例として、マレーシアの首都クアラルンプールにあるクレドールが紹介されています。創業者はインドの金融界から転じたブラーマル・バズデバン氏。11年に1億3000万ドルの第1号ファンドを立ち上げました。18年5月には第4号となる5億ドルのファンドの組成に成功しています。同氏へのインタビューを紹介しましょう。

 「後押ししたいのは企業のグローバル化ではない。多くのアジア企業にとって重要なのはリージョナリゼーション(地域化)である」(バズデバン氏)。この場合のリージョナリゼーションとは、地元に固執するという内向きの意味合いでは決してない。一足飛びに欧米や日本などの先進国市場を狙うのではなく、まずはASEANや中国、インドなどアジア各地で確固たる足場を築く戦略のことだ。
 人口が増え、経済規模が拡大している地域をホーム市場にしているのだから、わざわざ経済が成熟して競争が激しいアウェーに出ていくことはない、そんなしたたかな姿勢が透けて見える。
(第1章 アジアを動かすファンド資本主義 53~54ページ)

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