新卒一括採用関連の混乱はこれからも続くと予想されます。通年採用だけではなく、採用にまつわる問題は新型コロナ騒動で新しく出てきたものはほとんどありません。採用プロセスのオンライン化、社員や組織に関するデータを収集・分析し組織づくりに生かす「ピープル・アナリティクス」の活用、グローバル採用への対応など、最終的には導入しなくてはならないとわかっている事項は多いのです。自社のあり方をしっかりと分析し、目的に応じて最適な採用手法を選ぶ能力が各社の採用担当者に求められています。

次世代リーダーの育成とグローバル人材

私はここ数年、地方自治体の職員を対象とした研修所で働き方改革や人材採用・育成に関する集合研修をする機会をいただいています。そこで受講生から自治体の抱える課題を必ずヒアリングするのですが、ほとんどの自治体が若者の流出による人口減を大きな課題として挙げます。若者の流出が地方都市に及ぼす影響はかなり大きく、これは地方都市の消滅に直結すると危機感を抱いている自治体は非常に多いです。

若者が流出してしまう理由は就職や進学など、高校卒業後の魅力的なキャリアの選択肢が地元にはないためで、これは今も昔も変わりません。都会に出ていきたい、地元以外の世界を知りたいという要望も中にはあるでしょう。ですが、地方都市の多くが若者にとって魅力のある将来を提示できていないのが、残念ながら事実です。

英国のUniversity College London のトゥーカ・トイボネン上級講師は、「日本は若者が夢を持ち挑戦することが歓迎されにくい」と指摘しています。この傾向は大都市圏でも地方都市でも大きな差がなく、若者の挑戦が歓迎される街は若者を呼び込む一つの手段となります。自己成長の機会にあふれ、挑戦を歓迎する環境があれば、日本のどこであっても若者が集まってくるはずです。

地方都市は若者が出ていくと嘆く前に、地元にいる「挑戦したい」と思っている若者の声に耳を傾け、彼ら彼女らの背中を押すような活動をしているか、今一度考えてみることが必要です。まずは、地方自治体や地元企業が地元にいる若者の挑戦を応援し、助けることで、若者が自分の将来の夢を地元でかなえることができる環境を整えることです。

例えば、ここ最近新型コロナによる経済損失を補うために、利用が増えている「クラウドファンディング」。都市部だけではなく地方都市でも、重要な資金調達やPR手段として次々とプロジェクトが立ち上がっています。地方都市に特化したクラウドファンディングサービスも多数登場し、そこで立ち上がるプロジェクトは単なる資金調達目的ではなく、志を同じくする賛同者からの支援を募るという社会的意義ももっています。こういったサービスは若者を応援する環境をつくり出すための、優れたツールにもなるポテンシャルを秘めていると思います。

さらに、現在グローバル化の流れは一時的に止まっているように見えますが、コロナが収束すれば再び流れが加速することはわかりきっています。ですから、その準備や投資をおろそかにすべきではありません。

日本企業でグローバルな人材を育成するには、2つのものを捨てる必要があると思います。1つは「日本語だけを使うこと」で、もう1つが「ゼネラリストであること」です。しかし、例えば日本企業の経営陣がすべてを英語でマネジメントすることは現実的に難しいと思います。また「ゼネラリスト」を良しとしてきた企業文化の中で、何のプロなのかわからない人たちに突然専門性の高さを求めても、外国人と比較されればとうてい勝てない水準の人材がたくさんでてきてしまうでしょう。

企業内の特殊性に特化している日本企業の人たちが、海外の人とまったく同じ土俵で「グローバル人材」として戦うのは、現状では非常に厳しいでしょう。今後はそのことを意識しつつ、日本の特性を生かした方法で、海外の人たちにも魅力的な組織づくりをすることを考えなければなりません。その結果として、「グローバル人材」というものが日本にも生まれてくるのだと思います。

碇邦生
2006年立命館アジア太平洋大学アジア太平洋マネジメント学部アジア太平洋マネジメント学科を卒業。民間企業を経て神戸大学大学院へ。その後、リクルートワークス研究所で主に採用を中心とした研究プロジェクトに従事、17年から大分大学経済学部経営システム学科の講師。

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発信するビジネスパーソンを応援する投稿サイト「日経COMEMO」は、碇邦生さんと、リンクトイン・ジャパン代表で日経COMEMOのキーオピニオンリーダーとして働き方に関する投稿を手掛ける村上臣さん、サイバーエージェントの執行役員で人事を担当する石田裕子さんの3人をゲストに、日本経済新聞社の石塚由紀夫編集委員がファシリテーターを務めるオンラインイベント「働き方innovation- 加速するジョブ型雇用社会に備えるー」を8月3日(月)に開催します。新しい働き方を模索するビジネスパーソン、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する経営企画担当者など、幅広い皆さんの参加をお待ちしています。
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