これらは、専門的な言葉でいうと「固有覚」が衰えていることの表れです。固有覚とは、トレーニングやリハビリテーションの分野で使われる言葉で、「固有受容感覚」や「深部感覚」ともいいます。

固有覚は、下図のように大きく4つに分けられます。

「体の内部の目」である固有覚は大きく4つ

人間の五感として、触覚や味覚は、皮膚や舌などの表面にあるセンサーが感じ取り、脳に信号を送ります。一方、固有覚は、関節や筋、腱(けん)など体の内部にあるセンサーが感じ取り、体の位置や運動の状態についての情報を脳に送ります。そのため、深部感覚ともいわれ、いわば「体の内部の目」なのです。

人間は、さまざまな動作を行うとき、固有覚からの情報を脳で整理し、それをもとに筋肉に指令を出しています。もし、位置覚が鈍っていたら、手や脚や頭などの位置が把握しきれず、ドアに手を挟んだり、家具に足をぶつけたりしてしまいます。また、運動覚が衰えると、道で人とすれ違うときに、よけたつもりがぶつかったりしてしまいます。

そして、人間は年を取ると、さまざまな機能が低下していきますが、固有覚も例外ではありません。早い人では、40代の後半から衰えが見え始めるのです。

牛乳パックの重さが特に分かりにくい理由

さて、牛乳パックを落としそうになるのは、固有覚のうち、重量覚の衰えのサインです。

重量覚が衰えると、牛乳パックに指が触れたときに、それがどれぐらいの重さなのかを正確に感じ取ることができなくなります。そのため、力を入れすぎてしまったり、逆に力が弱かったりして、うまく持ち上げられないのです。

しかも、牛乳パックは外側が透明ではないので、中身の量が見えません。これが透明なペットボトルに入った水だったら、視覚から「どのぐらいの量が入っているか」という情報があるので、重さが把握しやすくなります。

なお、コンビニでお釣りを受け取るときに落としそうになるのは、どちらかというと位置覚の衰えかもしれません。自分としては適切な位置に手を出しているつもりなのに、ズレてしまっているのです。

また、公園でお子さんとサッカーをしているときに思うように体が動かないのは、運動覚や位置覚、抵抗覚などの衰えといえるかもしれません。ボールを蹴っても、思ったようなスピードで狙ったところに飛ばないのは、自分の脚を動かすときの加速や、ボールから受ける抵抗などを、正確に把握できていないので、力の入れ具合を間違ってしまうからです。

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スポーツを楽しんで固有覚を鍛える!