地方の中堅・中小企業に呼びかけ
本書の大きな読みどころは、そうしたCXは、広範な裾野を持つ地方セクターの中堅・中小企業でこそ進めなければならないという主張だろう。なにしろ国内総生産(GDP)の7割はローカル型産業が占めており、その担い手は圧倒的に地方に立地する中堅・中小企業だからだ。帯に書かれた「日本経済復興の本丸」とは、この地方セクターのCXを指している。6章構成のうちの1章を割いてこのテーマを扱っており、先に挙げた新憲法草案もローカル版に落とし込んで示すという念の入れようだ。
「コロナショック後を考える本はいろいろ出てきたが、今はこの本の注目度が一番高い」とビジネス書を担当する本店マネジャーの川原敏治さんは話す。「会社を、生き方を、日本を、そして世界を変えよう」という冨山氏の呼びかけが、経済の再起動が鈍いと感じるビジネスパーソンの心に響いているようだ。
『アフターコロナ』も上位に
それでは先週のベスト5を見ておこう。
(1)サクッとわかるビジネス教養 地政学 | 奥山真司監修(新星出版社) |
(2)ワタキューセイモア会長安道光二の「感謝、謙虚、そして思いやりの心を」 | 村田博文著(財界研究所) |
(3)コーポレート・トランスフォーメーション | 冨山和彦著(文芸春秋) |
(4)FACTFULNESS | H・ロスリングほか著(日経BP) |
(5)アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド | 日経クロステック編(日経BP) |
(八重洲ブックセンター本店、2020年7月5~11日)
冨山氏の本はランキングでは3位だが、店頭の実売ではトップだったという。4位に『FACTFULNESS』。ユーチューブやテレビ番組効果でロングセラーが再び勢いづいている。本欄の記事「コロナ後の世界 技術とビジネスを手掛かりに大胆展望」で紹介したムックが5位に入った。ウィズコロナの時間が長引く中、コロナ後への関心が高まっているようだ。
(水柿武志)