新型コロナウイルスの感染拡大を受けて株式相場は急変しましたが、これを投資の好機と捉える個人投資家の売買は膨らみ、インターネット証券大手5社の2020年上半期(1~6月)の売買代金は19年下半期(7~12月)から6割も増えました。新たに口座を開く投資初心者も増えましたが、ファイナンシャルプランナーの中里邦宏さんは「リスクを避けるための分散投資は大切だが、運用の対象はきちんと把握すべきだ」と訴えます。
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これまで投資をしたことのない人が投資を始めようかと考えるとき、最大のハードルとなるのが運用対象の銘柄を選ぶことではないでしょうか。「多すぎてどう選んでいいかわからない」という声が相談の現場で少なくないのです。
公募投信、5931銘柄からどう選ぶ?
では、銘柄を極力選ばなくてもよい方法があるならどうでしょう? 例えば株式で運用するなら、個別の企業の株式(個別銘柄)を一つ一つ選んでいくのではなく、株式の市場全体に対して運用していくのです。それを可能にするのが投資信託(投信)です。
投信とは、ひと言でいうと、プロに運用を託すものです。運用したい人(投資家)から集めたお金を1つにまとめて、運用のプロである運用会社がさまざまな対象で運用していくものです。
実は、この投信自体も5931銘柄(※)と多くの銘柄があります。結局、投信の銘柄も多くの中から選ぶしかないのかと気が遠くなってしまうかもしれません。しかし、先ほど述べた、運用対象の市場全体に対して運用するタイプのものを選ぶのは、そう難しいことではありません。「インデックス運用」の投信を選べばよいだけです。インデックス運用とは市場全体などの指標の値動きに連動するよう運用するものです。
具体例を挙げると、例えば国内株式での運用を考えるなら、東京証券取引所第1部に上場する株式全体を指数にした東証株価指数(TOPIX)を運用対象にするインデックス運用の投信を選べば、株式の個別銘柄を選ぶことなく東証1部に上場する株式の全銘柄の動きを運用対象とすることができます。
バランス型投信は「幕の内弁当」
ところで前回のコラム「コロナ相場『あえて予想しない』 分散投資で資産守る」で、運用する対象を1つだけに集中するのではなく、違う動きをするいろいろな運用対象を組み合わせて運用する「分散」のメリットについて紹介しました。投信を使って、この「分散」を実現することもできます。