「天からの手紙」を解読 雨か雪か、雲の科学で考える気象庁 気象研究所 荒木健太郎(2)

ナショナルジオグラフィック日本版

世界のさまざまな雪の結晶は体系的に分類されており、結晶ができた時の大気の状態についてもある程度分かる
文筆家・川端裕人氏がナショナル ジオグラフィック日本版サイトで連載中の「『研究室』に行ってみた。」は、知の最先端をゆく人物に専門分野の魅力などを聞く人気コラムです。今回転載するのは、アニメ映画「天気の子」(2019年公開)の気象監修を務めた荒木健太郎さんが「雲の科学」を語るシリーズ。夏にはちょっと涼しい雪の結晶の話題から、危険な集中豪雨をもたらす積乱雲の予測まで、美しい画像とともに解説してくれます。

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気象庁気象研究所の荒木健太郎研究官が主宰する「#関東雪結晶 プロジェクト」を理解するためには、まず、関東地方の雪の特徴について知っておいた方がいい。

日本海側のように、大陸からの寒気が吹き込み、日本海から熱と水蒸気を得てできた積乱雲が雪を降らす時については、研究も進んでいる。真冬で寒気が充分に冷たければ、雪が落ちてくる途中に解けてしまって雨になる心配もない。いわば問答無用で雪になるとも言える。このような大陸からの寒気は、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置の時にやってくる。大局的な気圧配置が重要であるため現状でも上手く予測ができる。

一方で、関東の降雪は、様々な意味で「曖昧」だ。前線を伴った低気圧(南岸低気圧)が太平洋から接近してきて、雨か雪かをもたらすわけだが、雲の中でどんな物理過程が起きているのかもよく分かっていない。おまけに地形など地上の様子も影響して、どういう条件なら雨で、どういう条件なら雪、というふうには簡単には区別がつかない。

気象庁のサイトでは「予測が難しい現象について」というタイトルで南岸低気圧を解説している。2013年の成人の日のように、都心で雨予報だったのに大雪になったりという事例はこれまでにも多くあった。数ある大気現象の中で、気象庁がわざわざ特設ページをつくってその難しさを解説するほど南岸低気圧の予測、予報は困難なのだ(気象庁ホームページより)

ちょっと前には、南岸低気圧が八丈島より北を通れば南寄りの暖気流が強くて雨、南を通れば北寄りの冷たい風が吹き込んで雪、という説もあったらしいのだが、2014年2月14日、15日にかけての大雪では、低気圧が関東に上陸して(つまり八丈島のはるか北)、なおかつ東京大手町で27センチもの積雪があった。都内の交通はめちゃくちゃになったし、山梨県甲府市や河口湖付近など、雪で流通が停止してしまったところも出た。荒木さんが過去60年分くらいの事例を調べてみたところ、結局、相関はなかったことが分かった。

ちなみに、18年1月22日に関東に雪をもたらした南岸低気圧は、八丈島の近くを通過していた。

荒木さんが過去60年分の事例を調査したところ、南岸低気圧の通るコースが八丈島より北か南かでは、大きな違いはなかった

というわけで、関東の雪の予測をするためには、雪が降る時に南岸低気圧がどんな成長段階にあって、どんなふうに雲が広がって、その雲の中でどんなことが起き、地上がどんな条件で……ということをひとつひとつ現象を理解していかなければならない。

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