国産レモンにこだわったレモンケーキ 夏にさっぱり
丸みをおびた形が愛らしく、懐かしさも感じるレモンケーキ。日差しをたっぷり浴びたレモンの甘みと酸味が堪能できる。国産レモンを使ったケーキを専門家が選んだ。
1位 リムヴェール コウジ・タカヤマ
果実まるごと 自然な酸味・苦み
「レモンケーキ」 オーナーシェフの高山浩二さんが「レモンそのものを味わえるケーキ」を目指して作った。レモンは広島県呉市の契約農家から送られてくるものを煮詰め「一つも無駄にしたくない」(高山さん)と、種とヘタ以外を余すことなく使う。
皮の苦みや果汁の酸味など、レモンの自然な味わいを引き出すため、レモン以外の材料は最小限にしぼった。「糖衣の甘さ、レモンの酸味と苦みの調和が見事」(chicoさん)、「レモンの個性を十分に発揮している」(下園昌江さん)など、多くの専門家から高い評価を受けた。
玉のように丸い形は糖衣がけが均等に流れて固まるようにするため。糖衣はレモン果汁と砂糖だけで作る。「すりガラスのように美しい」(下井美奈子さん)。実店舗はなく、オンラインでのみ販売。
(1)1944円(2)5個(3)https://www.limevert.online/
2位 スイーツガーデンコパン(埼玉県坂戸市)
フランスの伝統菓子から着想
「島檸檬(れもん)」 アーモンドをふんだんに使うフランスの伝統的な菓子「パン・ド・ジェンヌ」に着想を得て考案された。「糖衣にもレモンの風味がある」(若山曜子さん)、「生地のしっとり感、やわらかさのバランスがとれている」(秋山敏信さん)
生地には、黄味が濃いことで知られる那須の「御養卵」を使い、色味が濃い。レモンの爽やかさと口溶けの軽やかさを両立させるため、小麦粉の分量は限界まで少なくした。
レモン果汁の酸味を引き立てるため、表面を覆う糖衣には甘味を抑えたトレハロースを使う。「シャンパンと共に初夏のオープンテラスで楽しみたい」(猫井登さん)。
(1)1188円(2)5個(3)https://item.rakuten.co.jp/sweets-garden-kopin/ca-remon-3/
3位 ベークアンドケーキ ぱふ(静岡県菊川市)
マドレーヌの製法を応用
「レモンケーキのレモンちゃん」 果汁がしっかり染み込み、しっとり感を出せるマドレーヌの製法を基にレシピを作った。「卵やアーモンドの風味も楽しめる。どっしりしたケーキが好きな人におすすめ」(福田淳子さん)
「口いっぱいに広がるかんきつの香り」(松本学さん)は地元・浜松産の有機栽培レモンのもの。皮まで口に入れるため、自然な製法にこだわった。
焼き上がり後の生地表面にレモン果汁を煮つめた糖衣を塗って酸味を強めてあり「レモンの存在感が強い」(スイーツなかのさん)。
(1)1790円(2)6個(3)https://puff2013.com/
4位 ロリアン洋菓子店(神奈川県海老名市) 500ポイントシャリシャリの食感
「檸檬ケーキ」創業55年の洋菓子店が昭和期に販売していたレモンケーキに手を加え、3年前に復活させた。生レモンを使っていなかった当時と異なり、国産レモンの果汁と皮を使う。バターも風味がしっかりした北海道産のものに切り替えた。「シンプルながらもレモン果汁のほどよい酸味と皮の香りが爽やか」(平岩理緒さん)
生地をチョコで覆う前に粉糖とレモンリキュールを混ぜて塗ってあり「シャリシャリの食感と心地よい甘みを感じる」(なかのさん)。
(1)1404円(2)5個(3)https://item.rakuten.co.jp/rorian/574206r/
5位 アカシエ(さいたま市)
ジューシー感際立つ口溶け
「フォンダン・シトロン」店名はオーナーシェフの興野燈(きょうのあかし)さんの名にちなむ。瀬戸内レモンの果汁をたっぷり使う「存在感のある薄い糖衣」(松本さん)と「キメ細かい生地」(下井さん)の口溶けで、レモンのジューシー感が際立つ一品。
卵液に果皮を浸し、裏ごしを経て焼き上げた生地は「爽やかな香りの余韻が長く続く」(猫井さん)。砕いたカリフォルニア産アーモンドの控えめな香りがレモンを引き立たせる。
(1)1458円(2)5個(3)https://shop.cake-cake.net/acacier/index.phtml
6位 カトルフィユ(広島市)
軽さとコク バランス絶妙
「広島レモーネ」店名は仏語で「四つ葉」を意味する。「軽さとコクのバランスがよく、これだけでおいしい」(下園さん)と評される生地は広島産コシヒカリの米粉と小麦粉をブレンドした。
カットすると卵とレモンの「黄色い鮮やかさ」(なかのさん)があらわになる。チョコのコーティングはレモンの味わいを邪魔しない薄さでかけられるようにメーカーと調整し「表面がチョコなのにレモンの香りが強く出ている」(若山さん)。
(1)2200円(送料込み)(2)5個(3)https://item.rakuten.co.jp/okodepa/1-08-0-000402/
7位 オッティモ(宮崎市)
レシピ刷新、日南産に着目
「宮崎れもんケーキ」4年前に創業者が引退したのを機にレシピを刷新。オレンジとの交配種である日南産のマイヤーレモンを使った。皮が薄く酸味がまろやかなため「あっさりして食べやすい」(福田さん)。
生地には3日かけて渋みとえぐみを取ったレモンピールを使う。チョコは生地にそのままコーティングせず、レモンシロップの薄い膜を1層張った上にかける。「酸味を含んだしっとり生地のサプライズがうれしい」(平岩さん)。
(1)2700円(2)10個(3)https://fujingaho.ringbell.co.jp/shop/g/g053F-017/
7位 五感(大阪市)
生地の素材にこだわり
「檸檬燦(れもんさん)」国産素材にこだわる洋菓子店が手がける。減農薬なのに表皮がきれいで、香りもレモンケーキに最適と感じた「いわぎレモン」を使う。愛媛県の離島、岩城島の名産で「やわらかい生地にほのかにレモンの皮の爽やかさを感じる」(下園さん)。
生地にはハチミツを用いており、レモンの香りを引き立てつつ、酸味を和らげる。「ボリューム感があり、親しみやすい味わい」(鈴木兼介さん)、「子どもからお年寄りまでみんなが食べやすそう」(chicoさん)。
(1)1080円(2)5個(3)http://shop.patisserie-gokan.co.jp/
9位 ルーテシア(新潟市)
カカオバター 舌触りなめらか
「レモンケーキ」薄黄色の印象的な見た目はレモンオイルを配合したホワイトチョコレートのコーティング。人肌で溶けるカカオバターをふんだんにふくませ、「なめらかな舌触り」(松本さん)を実現した。「生地とチョコとの甘みのバランスがとれている」(若山さん)
オーナーシェフで社長の川上啓介さんが「懐かしさと今らしさ」をテーマにレシピを考案した。「一口目で懐かしい味、その向こうの生地に豊かなレモンのおいしさを感じる」(猫井さん)。
(1)1188円(2)4個(3)http://www.lutecia.jp/gift/
10位 あじば農園(広島県尾道市)
添加物使わず子どもも安心
「カープ檸檬ケーキ ぶちすいー」レモン農家を営む夫婦が自分たちの畑でとれたレモンで作るケーキ。商品名の「ぶちすいー」とは、広島弁で「とてもすっぱい」を指す。生産者として、レモン本来の酸味を生かしたケーキ作りにとことんこだわった。「生地自体がしっかりレモン果汁の酸味をとじこめ、爽やか」(平岩さん)
子どもでも安心して食べられるものを目指して、材料はすべて添加物不使用。「シンプルだが、丁寧に作られていることが伝わる」(なかのさん)。
(1)900円(2)3個(3)http://www.ajiba.jp
国産レモン増え 味わい豊かに
国産レモンといえば広島県や愛媛県など瀬戸内地方のものが有名で、今回上位に入ったレモンケーキも瀬戸内産を使ったものが目立つ。ただ、3位の「ベークアンドケーキ ぱふ」は静岡産、7位の「オッティモ」は宮崎産。国産レモンの栽培量の増加もあり、地産地消の動きが広がりつつある。
お菓子の歴史研究家の猫井登さんによると、レモンケーキの始まりは1973年に福井県敦賀市の菓子店が東京都内の菓子型メーカーにレモンに似せた型を発注したのが始まりとされる。当時はレモンの形をした、黄色いパッケージのものが多かったようだ。
ブームの再来は2015年。大手コンビニでもレモンケーキを販売するなど、多様な業態が参入。レモンの形状にもこだわらず、四角や丸形のものなど多様化した。猫井さんは「近年の酷暑で夏にも楽しめる酸味と爽やかさを併せ持ったお菓子として好まれているのでは」とみる。
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(田中早紀)
[NIKKEIプラス1 2020年7月18日付]
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