障害者雇用に詳しい慶応義塾大学の中島隆信教授は「密にならない働き方の広がりは、対面が苦手な一部の障害者にとってはプラスになりうる」と話し、テレワークの普及に注目しています。コロナで打撃を受けた職種への支援と働き方の見直しは、障害者就労の現場でも求められています。

中島隆信・慶応義塾大学教授「『密になれない』は社会的障害」

新型コロナ危機を経て障害者雇用はどう変わっていくのでしょうか。『障害者の経済学』の著書がある慶応義塾大学の中島隆信教授にオンラインで聞きました。

――新型コロナは障害者の働く現場をどう変えていますか。

中島隆信・慶応義塾大学教授

「障害のあるなしに関わらず、オフィスや現場に行く必要がある仕事は出勤停止を強いられたり、収入が減ったりしています。一方、IT(情報技術)など障害者がもともと遠隔で手がけていた仕事はあまり影響がありません。コロナは『密になれない』という状況を障害のあるなしに関わらずもたらしており、社会的な障害を作り出したと考えています」

――どのように対応すべきですか。

「対面の会議や営業など今までの働き方が難しくなったのですから、働き方を変えることで障害を減らしていくしかありません。たとえばテレワークの普及は一部の障害者にとってはプラスになり得ます。『人が大勢いる中では働きにくい』という障害者は多いですし、『満員電車には乗りたくない』という精神障害者もいます。必要のない会議や集まりが減っていけば、障害者も働きやすくなる可能性があるのです」

――在宅勤務で仕事を任せられるのか、という不安もあるようです。

「今の障害者雇用は労働時間の管理とセットですから、管理する側には『在宅勤務でちゃんと机の前にいるのか』といった心配もあるでしょう。成果を出してくれるかどうか、という不安も一般の職場のテレワークと同じです。しかし労働時間にしても成果にしても、管理する側とされる側の信頼関係の有無が本質的な問題です。まずは労働時間を把握するやり方から成果で測るやり方へと管理手法を変えていくことが必要でしょう。さらに精神障害者の中には、決められた昼間の時間よりも夜間の方が力を発揮できるという人もいます。成果を信じて仕事を任す、という発想が必要でしょう」

――今後の障害者雇用の見通しを教えてください。

「障害者雇用を一般の雇用と切り離して考えがちですが、様々な社会的障害があることは、障害者もそうでない人も変わりません。けがや病気、うつや介護によって一時的に仕事ができなくなるという障害は誰にでも起こりえます。企業にとっては、従業員の誰もがそれぞれの状況に応じた働き方を選べるかが問われていくでしょう。障害に合わせた働き方ができる職場は勤労意欲を高めることも可能だと思います」

(高橋元気)

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