「ANTCICADA」の看板料理コオロギラーメン。麺にもコオロギの粉が練り込まれている。コース料理に組み込まれたラーメンは、トッピングの揚げコオロギを味わいの異なる2種類から選べる。手前がうまみの強いフタホシコオロギ、奥が上品な味わいのヨーロッパイエコオロギ

「ANTCICADA」の名物料理のコオロギラーメンは、もともと、篠原さんが学生時代よく通っていたラーメン店と共同開発したものだ。2015年からイベントなどで販売し評判を呼んできた。だしに用いるのは、強いうまみと若干のえぐみを持ったフタホシコオロギと、上品できれいな味わいのヨーロッパイエコオロギの2種類。常に改良を重ね、現在は初期のだしには入っていなかった「コオロギ醤油(しょうゆ)」を使用する。コオロギ醤油とは、ダイズの代わりにコオロギに麹(こうじ)菌を生やしつくった発酵調味料だ。ラーメンはコースにも組み込まれているが、単品で提供する際とはだしの内容を変えているというこだわりようである。

コオロギを使ったチップスとこれに合わせるコオロギビール。コースの内容は、定番料理のラーメンやこのチップスなどを除き季節によって変わる

ラーメンのだしは、コースの最初に登場するスナックにも用いられている。だしに片栗粉などを合わせ乾燥させたものを揚げたコオロギチップスだ。発酵したマッシュルームや薫製トウガラシのパウダーをふりかけていて、深い森を思わせる香りが立ち上る。さっくりと軽い食感で、コオロギ特有のエビに似た味わいやたっぷりとしたうま味にやみつきになりそうだ。

同店では、各料理に合わせたドリンクのペアリングコース(アルコール、ノンアルコール両方のコースがある)も用意しているが、チップスに合わせる酒は、「コオロギビール」。岩手県の遠野醸造と共同開発したビールで、コオロギを麦汁と共に煮沸して造った黒ビールである。さらっとした飲み口だが、苦みとコク、うまみのバランスがよく、チップスによく合う。

ふんわり軟らかなアユのコンフィ、ゴーヤとカリカリとした揚げキヌアが多彩な食感生む一品。フルーティな香りのタガメジンと合わせる

ペアリングするドリンクの中には、タガメを使ったジンやノンアルコールドリンクも。そのいかつい外見からは想像できないが、タガメは華やかで果汁たっぷりの洋ナシを想起させる香りがするのだ。これはオスのフェロモンの香りで、「香りが強いのは精力が強いオスを使っているから。今が“旬”なんです」との篠原さんの説明に、食欲だけでなく虫の世界の面白さにも引き込まれる。なお、タガメは、これを食材として一般に用いるタイからの輸入品を使っている。

ちなみに、タガメジンと合わせていた料理は、アユのコンフィをゴーヤに詰め揚げたキヌアをまぶした、苦みとさわやかさが複雑に合わさった一皿だった。「タガメジンは、ウニにも合うんですよ」と白鳥さんはこれも意外な組み合わせを教えてくれる。