『ジュラシック・パーク』の毒吐き恐竜 実はこんな姿

日経ナショナル ジオグラフィック社

1942年、ディロフォサウルスの化石を発掘する、米カリフォルニア大学バークレー校の科学者たち(UNIVERSITY OF CALIFORNIA MUSEUM OF PALEONTOLOGY)

「1984年の論文以降の議論は、本物の骨格の話をしているのか、それとも石膏の骨のことを話しているのか、はっきりわかりませんでした」と、マーシュ氏は言う。その後、時間と資金を費やして詳しい研究をする者もいなかったため、ディロフォサウルスの解剖学的構造についての混乱は、数十年もそのままになっていた。

「誰もがそれぞれの研究のために何らかの形で頼っていた論文が、実はまとめられた時点で問題があったことがわかったのです」と、ミネソタ大学古生物学者のピーター・マコビッキー氏は言う。同氏は、今回の新しい研究には関わっていない。

ディロフォサウルスを再発見する

マーシュ氏は、最も完全に近い形で残されていた3体の骨格を7年間かけて分析した。いずれもナバホ族が所有し、カリフォルニア大学バークレー校に保管されていたものだ。別の2体の標本は、テキサス州オースティン校の古生物学者ティモシー・ロウ氏がナバホ族の土地で20年前に発見したものだが、その後1度も分析が行われていなかった。ロウ氏は、マーシュ氏の博士課程の指導教官で、今回の論文の共同著者でもある。

過去の研究では、ディロフォサウルスは弱い顎と繊細なとさかを持っていたとされていた。『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトンが、小説のなかでディロフォサウルスを細身の身体で毒を吐く恐竜として描いたのはこのためではないかと、マーシュ氏は考えている。だが、小説で描かれた毒も、映画の表現で追加されたフリルも、ディロフォサウルスが持っていたという証拠は化石からは見つかっていない。

新しい化石には、後ろ脚が1本、完全な形で含まれており、頭蓋や骨盤など以前の標本には見つからなかった部分もいくつか残されていた。さらに、強いあごと強力な筋肉をもっていたことも明らかになった。体長は6メートル。成長したティラノサウルス・レックスの約半分だ。そして体重は約750キロ。大型車サイズの首の長い草食恐竜なら簡単に捕食できただろう。

「ディロフォサウルスは明らかに、大きな体をした肉食恐竜でした」と、マーシュ氏は言う。

南米アルゼンチンのブエノスアイレスにあるベルナルディノ・リバダビア・アルゼンチン自然科学博物館で、初期の肉食恐竜を研究する古生物学者マーティン・エズクーラ氏は、今回の研究を歓迎している。「対象とする標本の数を論文の著者たちが増やしたことは、大変興味深いです。これまで考えられていたよりも多くのディロフォサウルスが、ジュラ紀前期に存在していたことを示しています」

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