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『ジュラシック・パーク』の毒吐き恐竜 実はこんな姿

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

1993年の映画『ジュラシック・パーク』のなかに、悪役のひとりが運悪くディロフォサウルス(Dilophosaurus wetherilli)に出くわし、殺される場面がある。人間よりも小さく、好奇心旺盛なディロフォサウルスは本性をむき出しにすると、エリマキトカゲのような首のフリル(えり飾り)を広げ、鋭い鳴き声を立て、悪役の目に毒入りの唾を吐きかける。

このシーンによって、ポップカルチャーにおけるディロフォサウルスのイメージはすっかり固定されてしまったが、実際のディロフォサウルスは、映画で描かれている外見とは大きく異なっていた。

「私は、『最も有名な"知られざる"恐竜』と呼んでいます」と話すのは、米アリゾナ州化石の森国立公園の古生物学者アダム・マーシュ氏だ。同氏は、ディロフォサウルスについて包括的にとらえなおした論文を2020年7月7日付で学術誌「Journal of Paleontology」に発表した。

化石が80年も前に発見されたにも関わらず、この恐竜のことはあまりよく知られていなかった。

最新の研究では、アリゾナ州で発掘されたまま、これまで分析されたことのなかった2つの標本を加え、生きていた時のディロフォサウルスの姿について、初めて明確なイメージを描いてみせた。約2億100万~1億7400万年前のジュラ紀前期に生きていたディロフォサウルスは、毒やフリルといった小道具に頼る小さな恐竜ではなく、当時としては北米最大級の陸生動物で、強力な捕食者だった。

「『ジュラシック・パーク』を見た人々が想像するよりは、はるかに大きな恐竜です」と、マーシュ氏は言う。

一部は化石で、一部は石膏

誤解が広まった経緯はこうだ。

ディロフォサウルスの化石は、1940年にアリゾナ州チューバシティにほど近い米国先住民ナバホ族の自治区で初めて発見された。発見者は、ジェシー・ウィリアムズさんというナバホ族の男性だった。1942年に、ウィリアムズさんは化石をカリフォルニア大学バークレー校の古生物学者に見せた。そこにいたサミュエル・ウェルズ氏が、1954年にそれを新種として記載した。

ディロフォサウルスの復元を担当したチームは、完全な骨格を展示したかったので、足りない部分は石膏で作った骨で補完した。その際に、アロサウルスという別の肉食恐竜に似せて骨格を形作ったため、完成した恐竜は本物のディロフォサウルスとはまるで違う外見になってしまった。しかも、ウェルズ氏は1954年の論文でも、1984年に発表したもう一本の論文でも、どれが本物の化石でどれが石膏なのかを明らかにしなかった。

この2本の論文を基にその後の研究が進められたことから、混乱が生じた。はたしてディロフォサウルスとは、三畳紀の肉食恐竜で七面鳥サイズのコエロフィシスに近いのか、それともジュラ紀後期のより大きなケラトサウルスやアロサウルスに近いのか、様々な憶測が飛び交った。

「1984年の論文以降の議論は、本物の骨格の話をしているのか、それとも石膏の骨のことを話しているのか、はっきりわかりませんでした」と、マーシュ氏は言う。その後、時間と資金を費やして詳しい研究をする者もいなかったため、ディロフォサウルスの解剖学的構造についての混乱は、数十年もそのままになっていた。

「誰もがそれぞれの研究のために何らかの形で頼っていた論文が、実はまとめられた時点で問題があったことがわかったのです」と、ミネソタ大学古生物学者のピーター・マコビッキー氏は言う。同氏は、今回の新しい研究には関わっていない。

ディロフォサウルスを再発見する

マーシュ氏は、最も完全に近い形で残されていた3体の骨格を7年間かけて分析した。いずれもナバホ族が所有し、カリフォルニア大学バークレー校に保管されていたものだ。別の2体の標本は、テキサス州オースティン校の古生物学者ティモシー・ロウ氏がナバホ族の土地で20年前に発見したものだが、その後1度も分析が行われていなかった。ロウ氏は、マーシュ氏の博士課程の指導教官で、今回の論文の共同著者でもある。

過去の研究では、ディロフォサウルスは弱い顎と繊細なとさかを持っていたとされていた。『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトンが、小説のなかでディロフォサウルスを細身の身体で毒を吐く恐竜として描いたのはこのためではないかと、マーシュ氏は考えている。だが、小説で描かれた毒も、映画の表現で追加されたフリルも、ディロフォサウルスが持っていたという証拠は化石からは見つかっていない。

新しい化石には、後ろ脚が1本、完全な形で含まれており、頭蓋や骨盤など以前の標本には見つからなかった部分もいくつか残されていた。さらに、強いあごと強力な筋肉をもっていたことも明らかになった。体長は6メートル。成長したティラノサウルス・レックスの約半分だ。そして体重は約750キロ。大型車サイズの首の長い草食恐竜なら簡単に捕食できただろう。

「ディロフォサウルスは明らかに、大きな体をした肉食恐竜でした」と、マーシュ氏は言う。

南米アルゼンチンのブエノスアイレスにあるベルナルディノ・リバダビア・アルゼンチン自然科学博物館で、初期の肉食恐竜を研究する古生物学者マーティン・エズクーラ氏は、今回の研究を歓迎している。「対象とする標本の数を論文の著者たちが増やしたことは、大変興味深いです。これまで考えられていたよりも多くのディロフォサウルスが、ジュラ紀前期に存在していたことを示しています」

とさかを持った美しい恐竜

『ジュラシック・パーク』に登場するディロフォサウルスの特徴で正しく描かれていたのは、鼻の上から頭にかけて生えていた一対のとさかだ。生きていたときのとさかは明るい色をして、クジャクの羽やシカの角のように、メスの気を引いたり、ライバルを威嚇したりするためのものだったと考えられる。

「とても魅力的な動物です。2枚の薄い骨でできたとさかは、鼻孔から眼窩の上を通って頭頂部まで伸びていました」と、マコビッキー氏は言う。

薄い骨と言ってもその構造は独特だ。内部がハチの巣状に穴が開いているおかげで、骨全体が強化され、保護されている。さらにその構造は、頭蓋やその他の骨にも広がっていた。ディロフォサウルスの祖先は、こうして軽い骨格を発達させていたのであろうことを示唆している。つまり、体が巨大化しても、自分の体重によって動きが制限されることなく、北米で初めての大型肉食恐竜に成長できたのだ。

さらに、とさかの空洞は鼻腔につながり、現生鳥類であるグンカンドリの喉袋のような、ディスプレーのために膨らませることができる空気袋がついていた可能性がある。ただし、この仮説に関しては他の古生物学者による検証が必要だと、マーシュ氏は断っている。

三畳紀からジュラ紀に入るころ、恐竜は突如として大型化した。そのころ巨大な肉食動物だったワニの仲間が姿を消し、代わってディロフォサウルス、クリョロフォサウルス、その他中国やアルゼンチンで発見された近縁のとさかをもつ恐竜が出現した。「空席になった食物連鎖の頂点の座を、とさかをもつ恐竜たちが目ざとく見つけて奪い取ったのでしょう」と、マーシュ氏は言う。

初めのころこそ繁栄したものの、数千万年というとさかをもつ恐竜の時代は、進化の歴史のなかではわずかな期間にすぎなかった。その後、ケラトサウルスやアロサウルスが主流となる。このころから、恐竜たちはとさかではなく羽毛を生やし始める。自分の力や魅力を誇示するには羽毛の方が効果的で、生物学的にも効率的だったのだろう。

「ディロフォサウルスは、ジュラ紀初期の獣脚類を理解するうえで重要な存在です」と、マコビッキー氏は言う。「けれど、それを描いた小説や映画は長い間、時代遅れの情報のままだったのです」

(文 JOHN PICKRELL、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月10日付]

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