メガトレンドに目をこらす

最後に著者は、メガトレンドについてデータに基づいた知識と正確な情報を得ることの意義を訴えます。

1965年にマンサー・オルソンという経済学者は、大集団になればなるほど共通の目標は達成されにくくなるという「集合行為論」という理論を打ち立てた。大集団になるほど、1人が手を抜いたところで全体に影響はないので、みながそう考えて手を抜いた結果、当初の目標は達成されなくなるという理論だ。
メガトレンドは、まさに集合行為論が作用する舞台だ。結果をコントロールしようとすると非常に多くの人の協調が必要になるが、一人ひとりの努力の効果は小さく見えづらいので、協調が得にくい。従来、国連のような特殊な専門家や一部の環境主義者しか、メガトレンドに関心がなかったということの背景には、尋常でない問題意識を持たなければ、気持ちが続かないということもあったのだろう。
(第9章 メガトレンドの理解度が勝敗を決する時代へ 291ページ)

これからはメガトレンドを意識している人たちと認識していない人の間で、下す判断が大きく異なってくることになるでしょう。特に不況期には、この認識の違いが事業戦略や投資判断の大きな違いとなって顕在化してくる可能性が高まります。その判断こそが「長期的な企業の競争力、投資のリターン、国力としても跳ね返ってくる」と著者は断言しています。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・赤木裕介

本書の企画がスタートしたのは昨年の3月。日本では意外と知られていないメガトレンドについてわかりやすく説明し、広く伝えたい、という著者の思いから本書は生まれました。当初つけていたタイトルは『2030年、ヤバすぎる地球』。このままいくと、10年後には決して明るいとはいえない未来が待っていることを、少しおどかすようなかたちで伝えようかと考えていたのです。

ところがその後、SDGsやESGの盛り上がりなどを背景に、多くの人や企業が日本と世界を取り巻く環境について、真剣に考えるムードが漂ってきました。そして、年初からのコロナ禍で、我々が前提として信じてきた社会が、実は非常にもろいものであることがはっきりしたのです。

もはや「ヤバすぎる」とか言っている場合ではありません。まずは信頼のおけるデータをもとにして、現状を把握し、できる限り先入観を捨てて未来を見通すこと。そんな基本ともいえる姿勢こそが重要だ、という意図を書名に込めました、

先行き不透明な世の中だからこそ、本書の内容を未来を考える軸としてご活用いただければうれしく思います。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

データでわかる 2030年 地球のすがた (日経プレミアシリーズ)

著者 : 夫馬 賢治
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 990円 (税込み)

ビジネス書などの書評を紹介
注目記事
ビジネス書などの書評を紹介