この章では、異常気象の実態についてデータを示しながら細かく描写していきます。フォーカスするのは機関投資家や企業が関心を寄せている諸問題。「異常気象の発生頻度の高まり」「止まらない気温上昇」「自然災害と異常気象のもたらす被害の深刻さ」「海面上昇の恐怖」「損害保険会社の経営リスク」などです。そして章の最後で大手企業の対策について語ります。著者が重視するポイントは災害対策の意義づけです。

再生可能エネルギーへのシフト以外にも、企業は今後、将来の災害に備え、事業所や工場、サーバーセンターを災害リスクの少ない地域に移転するなどの自主的な予防策にも乗り出すとみられている。日本では、地震対策として震災リスクの少ない地域にデータセンターを置く対策などが進められてきたが、グローバル企業では、気候変動による自然災害リスクの少ない地域にデータセンターを置く対策も始まっている。
このような災害対策は「BCP(事業継続計画)」とも呼ばれ、新型コロナウイルスのパンデミックでも重要性が再確認された。災害対策は、政府や自治体にとっても重要な政策分野となっている。政府や自治体は、産業振興のためにも、災害リスクを低減することで立地の魅力を高める戦略も打ち出してきている。このように国や自治体にとっても気候変動から受けるリスクを低減することが、地域活性、雇用創出、税収増の面でもプラスの効果を生むと考えられるようになった。
(第1章 顕在化した気候変動の猛威 78~79ページ)

「コロナ禍」が繰り返すリスク

「地球は一つの生態系であり、一つの危機が別の種類の危機を引き起こす」。これは本書の発信する重要なメッセージです。例えば気温上昇は、食糧危機にも水資源の枯渇にも影響します。さらに、コロナ禍に代表される感染症リスクにすらつながるというのです。

インフルエンザはこれまで高温・高湿度に弱いとされてきました。しかし、温暖化とインフルエンザ・ウイルス拡散がリンクするという議論が盛んになっています。「2020年に発表された論文によると、過去のデータを分析したところ、気温の変動が激しくなると、インフルエンザの流行が大きくなるという関係性が示され、気候変動によりインフルエンザの勢力を増すリスクが見えてきた」というのです。最近では専門家が凍土の融解と感染症の関連にも目を向け始めました。

その他、気候変動が感染症を引き起こすメカニズムでは、永久凍土の融解というパターンもある。2016年の夏に、ロシアのシベリア北部の寒村で、突如として12歳の少年が死亡。原因は、永久凍土内に眠っていた炭疽菌だった。地球温暖化の影響で永久凍土が融解し、凍土内に閉じ込められていたトナカイの死骸が地表に露出した結果、永久凍土内の炭疽菌が地上に放出されたというものだった。
(中略)
永久凍土には、地球上から絶滅したはずの天然痘が凍っているという説もある。ややオカルト的になってしまうが、致死性の高い未知のウイルスが凍っていると主張する論者もいる。
だが、必ずしもオカルトとして片付けられない状況も生まれてきている。2015年にはフランスとロシアの研究チームが、同じくシベリアの永久凍土を調査したところ、3万年前の巨大ウイルスを発見した。2020年には、今度はアメリカと中国の研究チームがチベット高原で氷河の50メートル下から氷を採取したところ、33種類のウイルスを発見した。33種のうちの28種類は実際に未知のウイルスだった。
(第6章 感染症の未来――コロナの次のリスクはどこに 240~241ページ)
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