自作ラーメン好きから寄せられた多数の応募作品の中から「並んでも食べてみたい!」ラーメンを選ぶ「ラーメン・レシピ・コンテスト」(主催・日本経済新聞社)。ラーメンマニアの1人として、私は第2次審査に審査員の1人として参加させていただいた。どの作品もプロのラーメン職人顔負けの力作ぞろいだったが、その中で個人的に印象に残った3杯をここで紹介することにしよう。書面に記載されたレシピと、出来上がりのラーメンの画像。その二つの要素だけで、ラーメンの味を想像し、実際の店舗で提供できる1杯かまで思いを巡らせるーー。私にとっても実に貴重な体験となった。
1.「塩?醤油?食べてみそ!(味噌)」
1人のラーメンマニアとして、「是非、これを食べてみたい」と真っ先に思ったのが、この「塩?醤油?食べてみそ!(味噌)」だ。
出来上がりのラーメンの画像を見ただけで、考案者が自作ラーメンの創作にたけた者であるだろうと容易に想像できた。トッピングのチョイスや調理の仕方、麺の作り方。どれをとっても隙がない。
まずはトッピングだが、チャーシュー、メンマ、ネギ、三つ葉、糸唐辛子の5種類のみで、実にシンプルだ。必要不可欠なものだけを厳選し、スープの持ち味を損なうことがない。メンマも特筆に値する。麻竹の細切りを採用し、味噌たまり・三温糖・乾物スープで、しっかりと下味を施している。プロのラーメン職人であっても、メンマにまで気配りできる人は多くない。ラーメン作りで通常、力点が置かれるのはスープと麺、次がチャーシュー。ともすればメンマは後回しにされがちだ。見方を変えれば、メンマがしっかり調理されているならば、スープや麺、チャーシューはいわずもがなで、おいしいラーメンの可能性が高いということになる。
次に、麺の作り方について。ラーメンを自作する上で、麺を「どうするか」は最優先事項のひとつといえる。市販の既製品を使うか、中華麺専門の製麺所から取り寄せるか、はたまた自分で作るか。
この考案者は、迷うことなく自作の道を選んだ。レシピを見ると、国産と外国産をブレンドするなど小麦の種類にまでこだわる。
だしをとるガラを親鶏のものとしたり、タレに用いる「味噌たまり」をチャーシューとメンマの味付けにも活用したりすることで、食味の一体感を生み、深いコクと熟成したうま味の演出に成功。実によく考えられたレシピだと分かる。
この内容のラーメンが、原価率35%で提供できるなら、今すぐにでも開業できるだろう。そう思わせるのに十分な魅力的レシピだと感じた。