2020/7/20

養育期間の特例措置を活用する方法

年金額の低下の影響については、解決できる方法があります。それは、養育期間の特例措置で、子どもが3歳までの間に標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる制度です。対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月まで。

これも、ポイントは本人の申し出による点です。本人の申し出を受けて、添付書類として戸籍謄(抄)本や住民票などを添えて、事業主が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を日本年金機構へ提出します。

また、この特例は、育児休業をしていた従業員には限られません。3歳未満のお子さんがいる夫婦において、それぞれ申し出ることも可能です。昨今は新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務をしている企業が多いですが、在宅になることで通勤手当の支給がなかったり、残業代の減少や休業などにより標準報酬月額が下がるケースは十分に考えられます。

添付書類を準備する手間などはあっても、それに見合うメリットはあると言えるでしょう。これこそ、知らないと損する仕組み、と言えるかもしれません。

コロナによる特例改定も新設

新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、休業により報酬が著しく下がった人に、一定の条件に該当する場合は社会保険の標準報酬月額を通常の随時改定によらず、特例により翌月から改定が可能となる仕組みが新設されました。

上述した育児休業終了時の改定についても優遇はされていますが、あくまでも改定ができるのは4カ月目からとなります。新型コロナによる標準報酬月額の特例改定では、翌月に改定できる点が大きな特色といえます。

具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことで4月から7月までの間に、報酬が著しく低下(2等級以上)した月が生じた場合で、この特例措置による改定内容に本人が書面により同意していることが必要です。

本人の同意が必要な理由は、傷病手当金や出産手当金、および年金の額においても影響を受けることによります。その他にも、この特例改定には通常と異なる注意点がいろいろとあります。本人からの申し出が手続きの要件ではありませんが、新型コロナの影響による休業で給与が下がった場合は、会社に自分の場合は該当するかどうか、確認してみてもいいかもしれません。

社会保険は私たちの生活に密接にかかわるうえ、現在の給与や将来の年金額にも影響します。少し難しく感じられるかもしれませんが、知らないまま放っておいてしまうと、もったいないこともあります。特に、育児休業をする当事者は、制度のポイントを理解して、最大限に活用しましょう。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。中央大学大学院戦略経営研究科修了(MBA)。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、働く女性のための情報共有サロン「サロン・ド・グレース」を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌などで活躍。