取材はオープンなスペースでマスク着用にて

視点や情報源に広がり、情報の質が向上

白河 「タイムリーでスピーディーな対応が可能になったということのほかに、顧客満足度が上がる、あるいは皆さんの生産性が上がる効果はありましたか」

吉野 「2つほどありました。まず、『関西支店(大阪)にいながら東京の業務を担当する』といった部署を横断する働き方をすることで、東京にいるだけでは得られない視点や情報源を持てるようになりました。また、移動時間の短縮によって、新たなアイデアを練り上げたり、新規事業を考えたりする時間が増えました。結果として、お客様に提供できる情報の質が上がり、生産性の向上にもつながったと思います」

白河 「逆に『これがうまくいかなかった』と直面した課題や克服法の発見はありましたか」

原田真希さん

原田真希さん 「管理ビル内のにおいについてのご相談がお客様からあったときには、さすがに現地対応でないと難しいなと判断しました。においをリモートで確認することは難しいので……。ただし、このときも私が現地に行くことはせず、現地にすぐに向かえるメンバーと連携し、スピーディーに対応してもらいました。特に問題なくスムーズに解決できたと、お客様から聞いています」

吉野 「いい意味で、こうでなければという思い込みから解き放たれたような気がします。これまでは、『お客様に呼ばれたら、チーム一丸となって直行!』と複数人で向かっていたのですが、実はお客様の最大ニーズはそこにあるのではなく『来るのは1人でもリモートでもいいから、早く問題解決してほしい』というものだったと、改めて気づかされました。実際、お客様の声をアンケートで集めてみると、『不便はなかった』という声が100%。自社への導入検討も含めて、取り組み自体に『興味がある』と答えた企業も65%を占めました。実験期間中に取り組みに参加してくださった顧客企業数は24社。オンライン会議の実施回数は計52回でした。他社や他業界にも『あたらしい転勤』の提言ができる可能性があると分かり、非常にモチベーションが高まりました」

(以下、来週公開の下編に続く。コロナへの対応で役立ったこと、人事制度化に向けた新たな実験の内容、今後のオフィスに求められる役割などについて聞いた)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大特任教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)