大阪の物件に住んで、東京の業務を実行

白河 具体的にはどういう実験形式をとったのですか?

宮関裕香さん

宮関裕香さん(以下敬称略) 「私の場合、日ごろは東京本社で行っていた業務が『あたらしい転勤』のスタイルで遂行可能かどうかを検証するため、関西支店(大阪)の近くに月決めの賃貸マンションを借り、大阪に1カ月滞在しながら支店に勤務し、通常業務を行ってみました。どうしても東京に出向く必要がある『現地マスト業務』については、用件をまとめて1回の東京出張だけで済ませられるように調整しました」

白河 「その『現地マスト業務』をいかに減らせるかがポイントだったんですよね。おそらく『営業たるもの、お客様のもとに行ってこそ』という文化があったはずですし。新型コロナウイルスの影響で多くの人が半ば強制的にリモートワークを経験した今と半年前では、社内の雰囲気も大きく違ったと思います」

宮関 「おっしゃる通りです。当社の営業スタイルは対面がずっと基本でしたし、不動産業界は法律の制約も一部ある影響で、契約書とハンコにひも付く紙文化も根強くて。『まさかリモートでできるわけない』という声が社内から上がりました。そこで、まずは業務の洗い出しからやってみようと考え、業務を『遠隔可能』と『現地マスト』に分けてみたんです」

白河 「その結果がこれですね。実験前には業務の50%が『現地マスト』と考えられていたのに、実験後にはわずか5%に。業務の85%が『遠隔可能』へと劇的に変わっています」

担当業務を棚卸しして、リモートで可能な業務を洗い出した

吉野 「当初は『社内はともかく、お客様とのミーティングをオンラインでお願いするのは失礼じゃないの?』という不安があったのですが、いざやってみると『案外うまくできるものですね』とおっしゃるお客様が少なからずいらっしゃいました。むしろ、『いつもより対応がスピーディーになって助かる』と喜んでいただける声も聞かれ、驚きました」

岩楯薫さん

白河 「やってみると、メリットを感じる顧客が多かったんですね。顧客価値創出も受賞の大きなポイントです」

吉野 「はい。『あたらしい転勤』の働き方では、パソコンの前に張り付く時間が増えるので、お客様から急な問い合わせやトラブル相談があった場合にも、お待たせせずにすぐに対応できることが増えました。また、移動が不要になるので、より多くの打ち合わせをスケジューリングできるようになり、顧客価値への寄与の効果があると実感しました」

白河 「とはいえ、実験はコロナ前。当時はまだ多くの企業がテレワークの導入に及び腰でしたし、『Zoom(ズーム)』や『Teams(チームズ)』といったオンライン会議システムもほとんど知られていなかったのでは?」

吉野 「たしかに、お客様の中には『賛同するけれど、うまくできるか不安。実際、吉野さんはどうやって会議に参加するの?』というリアクションもありましたので、丁寧に説明するようにしました。初回のミーティングの前には『会議開始の時間になったら、このURLをクリックしていただければ、こんなふうに画面上に私が登場します』というふうに、具体的なイメージをお伝えしていました。コロナによる在宅勤務奨励が世の中全体で進められてからは、オンライン会議の習慣が一気に広がったので、説明する必要はほとんどなくなりました」

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