その初日、オペレーション専門のプリンシパルから、「物流市場の需要予測の手法を決定する前工程として、世にある統計・分析手法を俯瞰(ふかん)するように」との指示がありました。「何をしたら全体を俯瞰(ふかん)したと言えるのか」が分からないまま、リサーチに取りかかりました。
まず数十冊の書籍から、「回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析、コレスポンデンス分析、数量化1類、数量化2類、数量化3類……」などの分析手法を抽出しました。そして各手法の概要を整理した上で、2日目のプリンシパルとの打ち合わせに臨みました。
プリンシパルからのフィードバックは「大量の知識のインプットはできているかもしれないけど、知識の羅列でしかないね」でした。そして「知識の構造化をどのようにすべきか?」「物流市場の需要予測に適した統計・分析手法をどのように選ぶべきか?」「顧客企業のオペレーションへの実装も考えたときに、どのようなツール・プロセスであるべきか?」といった問いかけがなされました。
その後、プリンシパルがホワイトボードの前に立ち、一つ一つの問い対して、次々に論点や仮説を書いていきます。最初は、「なるほど」「確かに」と思いながら話を聞いていましたが、打ち合わせは実に10時間に及びました。
私は考え続けるのが限界となり、途中からは記憶が薄れたように感じます。ただ、私より二回りほど年上のプリンシパルの長考力・熟考力を目の当たりにし、「自身の脳の使い方、考え方を変え、知的体力を鍛えないと、期待されている役割や成長スピードに達しない」と痛感しました。
人材を育てる根本、組織として伝える
この直後、このプリンシパルと初めてのプロジェクトに取り組みました。それはマーケティング戦略のプロジェクトでした。プリンシパルは「顧客の購買行動・購買基準と自社・競合の充足状況は?」「本質的に正しい分析手法と解釈のあり方は?」「顧客企業の目に見える成果につながるか?」など、長考力・熟考力をチームに問うだけではなく、その実践を背中で示してくれました。
また03年以降、私にとっての公式のメンターとなり、「常に2つ上のポジションのコンサルタントの仕事をせよ。本気で代わりをやるつもりで」といった記憶に残る言葉を授けてくれました。
19年には、「コンフォートゾーンを出よ。挑戦せよ」と、私が日本オフィスの代表に就任するように背中を押し、ストレッチ環境へのガイドと応援をしてくれました。
今年1月に私が日本代表に就任し、全従業員向けに世界最高水準のプロフェッショナリズム、プログレス・オア・アウトの前提であるストレッチ環境づくり、10年・20年・30年単位での人材の中長期育成のあり方を語ったとき、私のメンターであったそのプリンシパルからの教えや言葉を意識していたのは言うまでもありません。
このように脈々と伝承される厳選採用とストレッチ環境が感動品質・世界水準の仕事を目指す世界最高水準のプロフェッショナリズムを築く根本である、と私は考えています。
