価値観が合う人材だけを選ぶ

A.T.カーニーにおけるプログレス・オア・アウトの前提は厳選採用にあります。新卒採用・中途採用ともに、採用人数の目標を議論しますが、あらかじめ必要な人数を決めることはありません。

重要視していることは「Curiosity(知的好奇心)、Generosity(寛大さ)、Solidarity(連帯性)、Boldness(大胆さ)、Passion(情熱)の5つの要素からなる『Our Values(我々の価値観)』に合致する人材のみを採用する」という絶対基準を貫くことです。

各コンサルタントのパソコンのデスクトップには、Our Valuesが表示されています。また、世界各国のオフィスでは、「カルチャーデー」というプログラムが設けられ、各オフィスの全従業員が一堂に会してOur Valuesの意味合いやそれを象徴する行動を共有しています。

Our Valuesに合致する人材を探し出すため、採用活動は全従業員が取り組みますが、過去には新卒採用者数が1人となった年もあります。こうした絶対基準に基づく厳選採用の結果、A.T.カーニーは少数精鋭の集団となっています。

とはいえ、アップ・オア・アウトは厳しい環境で、プログレス・オア・アウトはぬるま湯になりがちなのでは、と感じた人もいるかもしれません。確かに、Our Valuesに合致する人材を採用しているだけでは、ぬるま湯になる可能性をはらみます。

ぬるま湯を抜け出してこそ成長する

そこで重要になるのが、プログレス・オア・アウトのもう一つの前提であるストレッチ環境です。私も大学卒業後から現在までA.T.カーニーのストレッチ環境を経験してきましたが、ぬるま湯と感じる日は一日もありませんでした。

私は2003年5月、新入社員研修を終え、顧客企業への提案書を作成するチームに参加しました。「非接触ICのポテンシャル評価」「自動車業界のサプライチェーンの高度化」「都市・地域金融機関の将来見通し」など多様な業界・テーマに約1週間ずつ関わりました。

業界の理解、テーマの理解、付加価値の出しどころの理解、リサーチの設計・実施、アウトプットの作成、チームへの貢献という、一連の仕事を1週間で行うスピード感に圧倒されていました。不安と危機感を感じていた入社3カ月目に、「物流市場の需要予測モデルの高度化」に関わることになりました。

次のページ
人材を育てる根本、組織として伝える
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら