ゼロから国際高校を創設 起業家に学ぶ実行力の養い方『世界に通じる「実行力」の育てかた』

「やらないこと」を後悔する

小林氏が「教育事業を通じて社会を変革する」という目標を見つけ出すまでには、いろいろな迷いや曲折がありました。「4回目の転職で、自分がほんとうにやりたいこと、つまり教育に出会った」と本人は明かします。

大学時代には、漠然と世のため、人のためになることをやりたいと考えていました。当時イメージしたのは官庁や国際機関で社会貢献するという働き方でした。しかし就職活動を通じて、こうした職場が自分に適しているという確信を持てなかったそうです。そこで、社会勉強とスキルの獲得を兼ねてグローバルな金融機関を選びました。モルガン・スタンレーに入社してIPO(株式公開)担当の部署などを経験。自分と5歳ほどしか変わらない人たちが自らの手で会社をつくり、多くの顧客のニーズをつかむ。そして、金融市場でさらに大きな資本を手にして事業を拡大している姿に刺激を受けたと言います。著者はその後、縁があってITベンチャーの経営に役員として参画しました。

社会人として5年たった頃のことです。「これがほんとうに自分のやりたいことだろうか」と自問するようになりました。そこで一念発起して、国際協力銀行へ転職。フィリピンで開発支援の仕事に従事します。インフラ整備を担う仕事が主でしたが、ここでも違和感を感じます。自分の関心は「機会の不均等」であって、それを解決するには教育分野に関わるべきだという考えにたどり着きました。そこでスタンフォード大学大学院に留学して学び直し、ユニセフで職を得ます。ところが今度は、巨大組織の国際機関で自分のやりたいことができるのか、と悩みました。34歳の時です。その頃、UWC ISAKジャパンの発起人代表となった谷家衛氏に出会ったのがきっかけで、ユニセフを離れて起業の道を選びました。国際高校の設立に取り組み始めたのです。

チェンジメーカーの資質とは

著者は講演や研修で「あなたはなぜ、目標を持ち、実行力を身につけることができたのですか」としばしば聞かれるそうです。

こうしたときに私は、「何か新しいことを始めようとしてその一歩が踏み出せないのは、ごくごく自然なことだと思います」とお答えしています。
アメリカのアントレプレナーシップ研究の大家、アダム・グラントがこんなことを言っています。「起業家も普通の人と一緒で怖い。ただ、起業家とそうでない人を分ける唯一の違いは、怖くても進むかどうかだ。なぜなら、起業家はやって失敗した後悔よりも、やらない後悔のほうが大きいことを、心底知っているからだ」。
これは必ずしも、起業家だけに言えることではないと思います。この10年の間に、日本や世界のあらゆる組織の中で、変革への渇望が渦巻き始めていると感じます。10年前に比べれば、何か新しいことを言ってみたりやってみたりすることのリスクは少しずつ減っているのではないでしょうか。
一歩を踏み出すのを「怖がるな」というのは違うと思います。誰だって多少なりとも怖いのです。私だって不安はありました。怖がりながらでもいいので、小さくても構わないので、身の回りのことから何か一つアクションを取ってみることが肝要だと思います。
(第2章 一歩前へ踏み出してみませんか? 77ページ)
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