世界最大広告賞に学ぶ 生活導線からのアイデア発想法第9回 アイデア分析編(4)

【優勝】Give a third(1/3を与える)

https://van-amstel.de/portfolio/give-a-third/

優勝したこの企画も、食料の1/3が廃棄されているところに着目したアイデアです。このチームは、イケアとのコラボレーションで「1/3が欠けている食器」を発売することを考えました。人々はこの食器を使うことで、実際にどれくらいの食料が廃棄されているのかを体感することができます。さらに、この食器の売り上げの1/3はWFPの活動に寄付されます。

この食器は、個人だけでなくレストランでも使われます。お店やお客さんのSNSで投稿されることによって、さらに多くの人に目撃されます。お皿には、この活動に寄付する方法も書かれており、問題を知り、興味を持ち、寄付するまでのスピード感がとても早い点が、このアイデアの特徴です。

行為の導線上に、情報と出会う瞬間を作る

以上、上位5チームのアイデアを紹介しました。いずれも面白いアイデアだったと思います。さて、これらのアイデアに共通する点は何だと思いますか。それは、発想の起点が人々の暮らしの中にあることです。

食料廃棄に対して意識を高めるアイデアを考えるとき、私たちはつい食料廃棄や飢餓の問題がいかに深刻なのか、その説明から始めてしまいがちです。しかし、それらの情報を見たとしても、どこか遠い場所の問題に思えてしまい、具体的な行動には移らない可能性が高いと思います。

そこで、視点を普通の人々の「食べる」という行為に移してみます。私たちは普通、レシピを調べて、食材を買い、調理をして、食べています。このような、日常の中にすでにある「食べる」行為と関連して問題を伝えることで、食料廃棄を身近な問題として認識させることが可能です。

今回の上位5チームのアイデアも、よく見るとこの「食べる」行為の導線上に位置しているのがわかります。「アレクサ、おなかすいてない?」は、レシピを調べる瞬間に、「ぬいぐるみとお買い物」や「2/3キャンペーン」は食材を買う瞬間に、「食材リサイクルレシピ」は調理する瞬間に、「1/3を与える」は食べる瞬間に現れます。

人は、世の中の情報のほとんどを、自分とは関係ないと思ってスルーしています。そのような時にこそ、商品やサービスの特徴から入るのではなく、人々の日常生活の中に入り込む「瞬間」を発見することが重要です。

例えば、歯磨き粉であれば、歯を磨く瞬間だけでなく「口を開く」行為に目を向けることで、虫歯や口臭を気にする様々な「瞬間」が見えてきそうです。ベッドであれば、寝る瞬間だけでなく「体の疲れ」を意識する瞬間を生活の中から見つけることで、新たなチャンスが見えてくるかもしれません。商品やサービスの特徴からではなく、人々の生活導線から考える。そんなヒントを、カンヌライオンズから学ぶことができました。

今回は、カンヌライオンズの若手向けコンテストからアイデア発想のコツを学びました。カンヌライオンズに集まるアイデアからは、毎年多くの刺激とヒントを得ることができます。来年こそは、またフランスの地にカンヌライオンズが戻ってくることを祈るばかりです。

岡田庄生
博報堂ブランドイノベーションデザインディレクター。1981年東京都生まれ。国際基督教大学卒、2004年博報堂入社。PR局などを経て、現職。14年に日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。共著に『博報堂のすごい打ち合わせ』など。

プロが教えるアイデア練習帳 (日経文庫)

著者 : 岡田 庄生
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 935円 (税込み)

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