楽しさを追求した「趣味」の乗り物

現在、ホンダのラインアップにはクロスカブ110というモデルがある。コンセプト的には、これこそかつてのCT110の後継車のはずだったが、CT125・ハンターカブが登場したことでそのポジションが微妙なものになってしまった。

私の印象としてはクロスカブ110は遊び要素をプラスした実用車。CT125・ハンターカブはモーターサイクルとしての楽しさを追求した純粋な「趣味」の乗り物である。

日本の二輪ユーザーは高年齢化が進んでおり、日本自動車工業会の調査によれば、全体の平均年齢は54.7歳だという。もっともボリュームの大きい80年代バイクブーム世代がそのまま年を重ねているということだろう。

コンパクトな液晶デジタルメーターを採用。速度計や距離計、燃料計を内蔵する

CT125・ハンターカブの人気はそうしたことも影響していると想像する。体力が衰えれば大きなバイクを扱うのはおっくうになるし、長距離ツーリングに出かける機会だって減るからだ。また、これは私自身がそうなのだが、年を重ねて見識が広まると旅の志向も変化してくる。高速道路でわざわざ遠方の有名観光地へ行くより、下道で身近なスポットをゆっくり巡る方が楽しめるのだ。

これまで、125ccのモーターサイクルといえば、ビギナーライダーのステップアップ的な位置付けであり、大排気量バイクの縮小コピーのようなモデルが多かった。その点、CT125・ハンターカブは大型バイクから「ステップダウン」しても違和感のないクラスレスの高品質感とキャラクターがある。そういうことなら、多少高価であることもマイナスの要素にはならないはずだ。二輪と四輪という違いはあるが、いまだ人気が衰えないスズキ・ジムニーにもどこか通じるものを感じる。過去のモデルの安易な復刻ではなく、とても先見性のある商品企画だと思った。

なお、市街地を70キロほど走ってみたところ燃費は約46キロ/リットルだった。消費燃料が少なすぎてあまり正確な数字が出ていないとは思うが、5.3リットルの燃料タンクだと航続距離は240キロ以上になる。

カラーラインナップは試乗した「グローイングレッド」と、この「マットフレスコブラウン」の全2色
(主な仕様)
全長×全幅×全高=1960×805×1085mm
シート高=800mm
最低地上高=165mm
車両重量=120kg
エンジン=124cc空冷4ストロークOHC単気筒
最高出力=8.8ps/7000rpm
最大トルク=1.1kgf・m/4500rpm
乗車定員=2人
価格=44万円(税込み)

(ライター 佐藤旅宇)