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日本経済新聞電子版に連載したビジネスノンフィクションをドラマ化した「ネット興亡記」。ネットバブル崩壊、固定観念や規制の壁、組織の解体・消滅やスタートアップならではの成長痛――。登場した経営者ら本人の言葉には、逆境をはね返すための示唆も少なくない。多くの挫折や困難に直面しながらそれを乗り越え、時代を切り開くビジネスやサービスを生んできた彼らの軌跡にデジタル時代のサバイバル術を学ぶ。

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【1】ホリエモンに嫉妬 サイバー藤田氏の「開き直る力」

第1回はサイバーエージェントの藤田晋社長。起業して2年で、2000年に26歳で当時、独立系として最年少で上場を果たした。時代の寵児(ちょうじ)ともてはやされたが、ITバブルが崩壊すると手のひらを返したようにバッシングされた。
 「長い時間軸でみれば自分の正しさは証明されるはず」。今ではそう自信をもって言えるが、当時は「無能な経営者」の烙印(らくいん)まで押されて会社を手放そうとまで思い詰めた。それでもギリギリのところで踏みとどまり、自らを静かに客観視してキャリアを積み重ねてきた。そんな激動の起業家駆け出し時代に、同世代でただひとり、嫉妬した人物がいた。「ホリエモン」こと堀江貴文氏だ。

【2】あえてイバラの道も USEN宇野氏が磨いた「立ち直る力」

ドラマ「ネット興亡記」に登場するUSEN-NEXT HOLDINGSの宇野康秀社長。サイバーエージェントの藤田晋社長の起業を後押しし、その後にまな弟子が陥った窮地を救うため一肌脱いだ真相が明かされる。ライブドア事件で堀江貴文氏が逮捕された後にライブドアの株式を、周囲の反対を押し切って個人で買い取った逸話もある。六本木ヒルズにオフィスも住居も構えたこともないのに「ヒルズ族の兄貴」と呼ばれるようになった。
 ただ起業家としての歩みは波瀾万丈(はらんばんじょう)だ。あえていばらの道を選ぶこともあった。リーマン・ショック後には手塩にかけたビジネスを手放し、自らの会社を追われる辛酸もなめた。何度も挫折からはい上がっていくレジリエンス(逆境から立ち直る力)を磨いた。

【3】ネットの扉を開いた男 I I J 鈴木氏の「貫く力」

第3回はインターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木幸一会長。ドラマでは1994年に日本初となる商用インターネット接続事業を誕生させるまでの苦闘が描かれた。海の向こうでは新たな産業の芽が勃興しようとしていたが、当時の日本に「インターネットはすごいもの」という認識がなかった。野心を持ちI I Jを46歳で立ち上げたが、「こんなにも(周囲が)無理解だと思わなかった」と途方に暮れた。それでもネットの可能性を信じ続けて、日本のインターネット史の扉を開いた。

【4】劣等感も磨けば光る メルカリ山田氏の「頼る力」

巣ごもり需要で好調なフリマアプリを運営する「メルカリ」。第3話はメルカリの山田進太郎社長が自分の持つ可能性に丁寧に向き合いながら、世界で勝負するビジョンを描くまでのストーリーを描いている。「得意としていたものがなく悶々(もんもん)としていた」という学生時代をすごし、起業家の道も一度はあきらめた。自分にはない他人の良さを最大限に生かす。劣等感、コンプレックスでもない視点をどう確立したのか。自らの空白を埋めて目的を達成する「頼る力」を学ぶ。

【5】逃げるは恥だが役に立つ LINE舛田氏の「耐える力」

国民的対話アプリ「LINE」は2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに誕生した偶然の産物ともいえる。LINEの舛田淳・最高戦略マーケティング責任者(CSMO)は当時、「打倒グーグル」の戦略を描けず、もがき苦しむなかで鉱脈を見つけた。基となったのは、文化の異なる中国、韓国の企業で失敗を重ねながらもはい上がってきた経験。負けを認めて「逃げる」ことで、千載一遇のチャンスで実力を発揮する転機にする。「逃げるは恥だが役に立つ」。第5回はLINEの軍師の「耐える力」に学ぶ。

【6】違和感をうやむやにしない LINE出沢氏「問う力」

第4話の「逆襲のLINE」では「去るも地獄、残るも地獄」という過酷な状況から国民的アプリを生んだメンバーの心情がつづられている。主役の一人であるLINEの出沢剛社長は起業家ではないが、ある意味でネット業界の栄枯盛衰の舞台裏を誰より知る。ライブドア時代は絶頂とどん底を経験し、ボロボロになった組織の立て直しに奮闘した。LINE社長となった今、ヤフーを傘下に持つZホールディングスとの経営統合に動く。傍流にあっても違和感をうやむやにせず「問う」ことで、出身やカルチャーが違うチームをまとめるマネジメント術とは。

ネット興亡記

著者 : 杉本 貴司
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,200円 (税込み)

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