コロナの意外な影響 野生動物の事故死が米国で大幅減

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/7/27
ナショナルジオグラフィック日本版

米カリフォルニア州で撮影されたピューマ。発信器付きの首輪を付けている。同州のピューマ生息地は、大きな幹線道路によって分断されている(PHOTOGRAPH BY STEVE WINTER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による人間社会の混乱が、一部の野生動物に恩恵をもたらしている。交通事故で死ぬ動物が激減しているのだ。

ロックダウン(都市封鎖)がピークに達した2020年3月と4月、米国の道路の交通量は最大で73%も減った。同じ期間に、シカ、エルク(アメリカアカシカ)、ヘラジカ、クマ、ピューマなどの大型野生動物を死に至らしめた衝突事故は最大で58%減少した。イヌやヒツジなどの交通事故死の件数も、同様の急落を見せている。

「この状況が長く続くほど、動物の生存率が高まります」と、20年6月26日に発表された報告書の著者で、米カリフォルニア大学デービス校道路生態学センターのフレイザー・シリング氏は言う。

「現在のスローダウンが長引き、全国の交通量が例年の半分に満たない状態が1年続けば、幹線道路や一般道で死なずにすむ脊椎動物の数は5億匹になるでしょう。これはもちろん、野生動物にとって大きな出来事です」

今回の研究は、道路や車が生態系の機能に深刻な影響を及ぼし得ることを明確に示した。

大型の捕食動物は、生態系のバランスを保つうえで重要な役割を果たしている。研究者らは、米カリフォルニア州で減りつつあるピューマに注目した。この動物は、道路によって生息地が分断され、交通事故や、孤立した個体群内での近親交配を引き起こしているからだ。ところが、ロックダウンの開始前後10週間の統計によると、車にひかれて死んだピューマの数は58%減少し、1週間当たり約2頭から1頭未満に減った。

「そういう意味では、新型コロナウイルスにも、ほんの少しですが良い面があります。車の速度が落ち、あるいは台数が減るということです」と言うのは、野生動物の研究を行っている獣医師、ウィンストン・ヴィッカーズ氏だ。「その結果、今年の死亡頭数はわずかに減少するかもしれません」

報告書は、現在の交通量の傾向が1年続けば、カリフォルニア州ではピューマ50頭の死を防げる可能性があると述べている。

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