有効性50%で大丈夫? コロナワクチン期待と不安

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

2020年3月16日、米国ワシントン州シアトルにあるカイザー・パーマネンテ・ワシントン健康研究所で、臨床試験中のコロナワクチンの接種を受けるニール・ブラウニングさん(PHOTOGRAPH BY TED S. WARREN, AP IMAGES)

新型コロナウイルスのワクチンに関しては、現在世界で140種類以上の研究が進められている。だが問題は、ワクチンの安全性と有効性をどこまで高めれば十分と言えるのかという点だ。

通常ワクチンの開発には何年もかかるが、パンデミック(世界的な大流行)になった新型コロナウイルスのワクチン開発は異例の速さで進められている。米国のバイオテクノロジー企業のモデルナは、2020年7月に臨床試験の第3段階に入る。米国政府は5月、「ワープ・スピード作戦」と名付けたワクチン開発加速計画に数十億ドルを投資すると発表した。

とはいえ、ワクチンが早くできればいいというわけではない。科学者たちの中には、最初にできたワクチンで満足してしまうことに危機感を抱いている者もいる。また、ワクチンがどの程度安全で有効であれば、一般への大量接種の準備が整ったと言えるのかを判断するのは、極めて難しい。

もし、効果が限定的なのに生産を大幅に拡大して接種を広く呼びかければ、もっと良いワクチンを開発しようとする研究者の意欲がそがれてしまう恐れがある。19年12月まで世界保健機関(WHO)でポリオ対策の調整官を務めていたロナルド・サッター氏は、「効果の低いワクチンで良しとしてしまえば、より効果の高いワクチンの開発が妨げられてしまうかもしれません」と懸念する。

ワクチンの真価は承認後に判明する

ワクチンの臨床試験は、3段階に分けられる。第1相試験では、50人ほどの小人数を対象に、ワクチンの安全性を評価する。

第2相試験では、もう少し被験者を増やしてワクチンの有効率(ワクチンによって発症を防げる割合)を確かめる。接種後、採血した血液を分析して、標的とする病原体を中和させる抗体などが作られているかどうかを調べる。

第3相試験はさらに規模を拡大して、数千人を対象にその有効性と安全性を測る。多くの場合、本物のワクチンを接種する人とプラセボ(偽のワクチン)を受ける人に分けて、両者の間で発症を防ぐ効果を比較する。

だが、ワクチンの真価が本当に明らかになるのは、正式に承認されて広く一般に接種されてからだと専門家は指摘する。

「臨床試験は、あくまでも管理された環境下で行われるものです」と話すのは、英国ロンドンを拠点とし、生物医学研究に資金提供する団体「ウェルカム」でワクチンプログラムを率いるチャーリー・ウェラー氏だ。

ワクチンの臨床試験に参加する人々は、医師に管理されていると思うと行動に気を付けるようになり、ウイルスへの感染リスクをできるだけ回避しようとする傾向にある。「治験に参加している人は、治験に参加していることを認識していて、普段の行動を変えてしまうことがあります。ですから、ワクチンの実力が本当に試されるのは、広く一般に接種されるようになってからなんです」

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