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有効性50%で大丈夫? コロナワクチン期待と不安

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ナショナルジオグラフィック日本版

新型コロナウイルスのワクチンに関しては、現在世界で140種類以上の研究が進められている。だが問題は、ワクチンの安全性と有効性をどこまで高めれば十分と言えるのかという点だ。

通常ワクチンの開発には何年もかかるが、パンデミック(世界的な大流行)になった新型コロナウイルスのワクチン開発は異例の速さで進められている。米国のバイオテクノロジー企業のモデルナは、2020年7月に臨床試験の第3段階に入る。米国政府は5月、「ワープ・スピード作戦」と名付けたワクチン開発加速計画に数十億ドルを投資すると発表した。

とはいえ、ワクチンが早くできればいいというわけではない。科学者たちの中には、最初にできたワクチンで満足してしまうことに危機感を抱いている者もいる。また、ワクチンがどの程度安全で有効であれば、一般への大量接種の準備が整ったと言えるのかを判断するのは、極めて難しい。

もし、効果が限定的なのに生産を大幅に拡大して接種を広く呼びかければ、もっと良いワクチンを開発しようとする研究者の意欲がそがれてしまう恐れがある。19年12月まで世界保健機関(WHO)でポリオ対策の調整官を務めていたロナルド・サッター氏は、「効果の低いワクチンで良しとしてしまえば、より効果の高いワクチンの開発が妨げられてしまうかもしれません」と懸念する。

ワクチンの真価は承認後に判明する

ワクチンの臨床試験は、3段階に分けられる。第1相試験では、50人ほどの小人数を対象に、ワクチンの安全性を評価する。

第2相試験では、もう少し被験者を増やしてワクチンの有効率(ワクチンによって発症を防げる割合)を確かめる。接種後、採血した血液を分析して、標的とする病原体を中和させる抗体などが作られているかどうかを調べる。

第3相試験はさらに規模を拡大して、数千人を対象にその有効性と安全性を測る。多くの場合、本物のワクチンを接種する人とプラセボ(偽のワクチン)を受ける人に分けて、両者の間で発症を防ぐ効果を比較する。

だが、ワクチンの真価が本当に明らかになるのは、正式に承認されて広く一般に接種されてからだと専門家は指摘する。

「臨床試験は、あくまでも管理された環境下で行われるものです」と話すのは、英国ロンドンを拠点とし、生物医学研究に資金提供する団体「ウェルカム」でワクチンプログラムを率いるチャーリー・ウェラー氏だ。

ワクチンの臨床試験に参加する人々は、医師に管理されていると思うと行動に気を付けるようになり、ウイルスへの感染リスクをできるだけ回避しようとする傾向にある。「治験に参加している人は、治験に参加していることを認識していて、普段の行動を変えてしまうことがあります。ですから、ワクチンの実力が本当に試されるのは、広く一般に接種されるようになってからなんです」

さらに、たとえ臨床試験をすべてパスしたワクチンでも、効き目に違いが出てくることがある。その理由ははっきりしていないが、標的となるウイルスに本来備わっている要素、例えば変異する傾向や、体内でどう増殖するかなどに加え、人間の自然な免疫系がどう作用するかといったことも関係するのかもしれない。

効果が高いことで知られているワクチンのひとつに、ポリオの不活化ワクチンがある。米疾病対策センター(CDC)によれば、3回の接種でその予防効果はほぼ100%とされている。麻疹(ましん)ワクチンも、1回の接種でおよそ96%の予防効果が得られる。

その他のワクチンは、予防効果がそこまで高くないまま実用化されている。インフルエンザウイルスは毎年のように変異し、毎年ワクチンを接種しなければならないが、罹患リスクを40~60%抑えるだけの効果しかない。

マラリアワクチン「RTS,S」にいたっては、わずか3分の1しか発症を予防する効果がない。それでも、マラリアが蔓延している地域では選択肢のひとつとして有望視されている。マラリアで死にいたるのはほとんどが幼い子どもで、3分の1でも救えれば目覚ましい成果だと話すのは、米メリーランド大学ボルチモア校医学部ワクチン開発センターの小児感染症専門家マシュー・ローレンス氏だ。

新型コロナウイルスに関しては、WHOが4月に示したように、高齢者を含め少なくとも人口の70%に対して効果を見込めるワクチン候補が理想的と言えるだろう。6月28日には、米国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏も、70~75%でも甘んじて受け入れるだろうと発言した。

一方、6月30日に、ワクチンを承認する米食品医薬品局(FDA)は、臨床試験における有効率の最低ラインを50%とするという指針を発表した。一部の研究者たちは、この指針に納得していない。「50%なんてひどすぎます」と、カナダのゲルフ大学オンタリオ校獣医学部のウイルス免疫学者バイラム・ブライドル氏は不満をあらわにした。「このパンデミックを終わらせるには、集団免疫を獲得する必要があるんです」。そのためには50%しか効かないワクチンではまるで足りないと、ブライドル氏は指摘する。

別の専門家は、どんなワクチンであっても、それは社会的距離の確保やマスク着用などと合わせたウイルス拡大抑止への多面的な取り組みの一環にすぎないと考えている。

免疫学者たちは、過去の経験から、新しいワクチンにはかなり神経質になっている。下痢を引き起こすロタウイルスの予防に初めて承認されたワクチンは、1999年に使用が中止された。腸の一部が別の部分に入り込んでしまい、死にいたる可能性があるという腸重積症がワクチンと関連付けられたためだ。重篤だが極めてまれなこの副反応は、治験段階では報告されていなかった。

もっと最近では、09年に豚インフルエンザワクチン「パンデムリックス」が、突然睡眠状態に陥るナルコレプシー(過眠症)を引き起こす恐れがあると、ヨーロッパで報告された。

官民共同でワクチン開発の加速化を支援するヒューマン・ワクチン・プロジェクトの社長兼最高経営責任者を務めるウェイン・コフ氏は、「小規模の治験では、重篤な副反応が見られることはめったにありません」と話す。大人も子どもも、世界中で認可されたワクチンを毎年何百万本と接種しているが、重篤な副反応が出ることは極めてまれだ。

モデルナの第1相試験では、45人の被験者のうち4人が著しい副反応を示した。そのうちのひとりの男性は、高熱を出して意識を失った。研究者の間では、このようなmRNAワクチンは免疫系を過剰に刺激する場合があることが知られていた。また、重い副反応を示した4人のうち3人は、治験で最も多い量を投与されていた。

ワクチン接種への理解を得ることも重要

コロナワクチンがWHOの基準を満たし、「ワクチンの恩恵がリスクを上回った」としても、どれだけの人が納得してワクチンを接種するかはわからない。

5月に、AP通信・公共問題調査センター(NORC)が米国で1000人以上を対象に行った調査では、約50%の回答者が、コロナワクチンが接種できるようになったら自分も受けるつもりだと答えた。同センターが過去にインフルエンザワクチンについて調査した際にもほぼ同じ回答が得られ、ピュー研究センターが同じく5月に行った調査でも同様だった。

だが、インフルエンザよりもコロナワクチンの方が、躊躇する人は多い。インフルエンザワクチンを接種するかどうか決めていないと答えた人は18%だったのに対して、コロナワクチンについて態度を決めかねている人は31%に上った。そのなかでも、コロナワクチンの副反応を心配する人の数は、インフルエンザワクチンの副反応を心配する人の数の2倍に及んでいた。

さらに、女性の方がコロナワクチンに懐疑的であるという興味深い結果も出た。コロナワクチンを接種すると答えた男性は56%だったのに対し、女性は43%にとどまった。「多くの家庭で、医療に関する決定権を持つのは女性です。家族全員のワクチン接種や医療の決定権を持ち、医者へ予約を入れる女性は、潜在的影響力を持つグループです」と、AP通信・NORC副所長のジェニファー・ベンズ氏は言う。

今後主に問題となってくるのは、有効なワクチンが受けられるようになったときに、自分が接種することでパンデミックの終焉を助けるのだということを人々にどう説明するかだと、ローレンス氏は言う。「ワクチンがどのように試験されたか、その安全性や役割、そしてそれがいかに感染症の拡大を防ぐのかといったことを広く知ってもらうために、私たちはあらゆる手を尽くさなければなりません」

ワクチンへの不信感以外にも、懸念材料はある。ウェラー氏は、少なくとも最初のうちは需要が供給を大きく上回ることを想定している。

米メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのアメシュ・アダルジャ氏も、一般への接種開始は慎重に計画しなければ、接種希望者が殺到して混乱が起こるのではないかという。「デパートで年に一度の大セールが開催された場合を想像してみてください」

過去に別の病気の集団予防接種運動に関わった人々は、コロナワクチンの開発過程を注意深く見守っている。ワクチンの信頼性とともに、受けたい人が受けられるようにすることが重要だ。サッター氏は警告する。「一般への接種開始は慎重にやらなければなりません。少しでも問題が起きれば、ワクチンへの信頼はあっという間に失なわれてしまいます」

(文 ROXANNE KHAMSI、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月4日付]

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