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家でつい業務用ウイスキー コロナで増える酒量の恐怖

アフター・コロナの飲み方(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

新型コロナウイルス感染症の対策として、「外出自粛」に取り組んだ人も多いだろう。家にいる時間が長くなった結果、酒を飲む量が増えるのは、世界的に共通する傾向だという。このままでは私たちの健康に甚大な被害を及ぼしかねない。そこで、飲酒と健康についての研究を手がける筑波大学准教授の吉本尚さんに、コロナ禍で酒量が増えてしまった人の抱える問題について話を聞いた。

買ってしまった…「業務用」ウイスキー

5リットルの業務用ウイスキーを買ってしまった…。

いつもなら、そんな大容量の酒は買わない。大容量の酒が身近にあると、つい飲み過ぎてしまうので「買わない」と心に決めていた。

しかし緊急事態宣言の後、「買い物は3日に一度に」という都知事の声明が出たこともあり、近所のスーパーに頻繁には行けなくなった。週末に入場制限をする店もあるし、さらにはまとめ買いの人が多いのか、お気に入りの酒が品薄だったりする。

言い訳にしか聞こえないかもしれないが、そんな事情もあって、ネットで業務用のウイスキーに手を出してしまったのだ。そして案の定、酒量が増えてしまった…。

だがコロナ禍で酒量が増えているのは私だけではない。私の周囲の酒好きに聞いてみると、こんな声が返ってきた。

「仕事が終わったら移動せずにすぐ飲めるし、終電を気にしなくてすむ」

「テレワークだと早起きしなくていいから、ダラダラ遅くまで飲んでしまう」

「旅行にも行けず、その分、ぜいたくなテークアウト料理や酒を買ってしまう」

「飲むことしか楽しみがない」

読者の方から「ああ、分かる」という声が今にも聞こえてきそう。これは日本だけではなく、世界的にも言えるようで、在宅勤務をしている全米3000人を対象としたAlcohol.orgの調査で、コロナ禍で「酒量が増える」と答えた人は35%もいることが分かった。また、「在宅勤務中に酒を飲む」と答えた人は3分の1にも上る。

勤務中に酒なんて… と思ったが、そりゃ監視の目がないわけだし、「ランチのついでに軽くビールを一杯♪」なんてこともできる。

それでなくてもコロナ禍でさまざまなストレスが心身にかかっているのだから、酒を飲みたくなるのも当然… かもしれない。

だが、そんなことではアルコールの弊害がカラダのあちこちに表れ、エライことになってしまう。そう、このままではいけない。5リットルのウイスキーを買ってる場合ではないのだ。

アフター・コロナでもテレワークは推奨されているのだから、大幅に増えた酒量を見直さなくては。ここはやはり専門家のアドバイスをいただき、きちんと自分の酒量と向き合おうではないか。

そこで、当コラムにもかつて登場された、筑波大学地域総合診療医学の准教授で、北茨城市民病院附属家庭医療センターのアルコール低減外来で診療もされている吉本尚さんに話を聞いた。

依存症患者が再び飲み始める「コロナ・スリップ」

まず吉本さんに聞いたのは、先生の診療所に通う方などから、「酒量が増えている」という話を実際に耳にしているかどうかだ。

「酒量が増えているという話は、あちこちから耳に入ってきます。今、懸念しているのは、アルコール依存症で断酒していた方がコロナ禍で再びお酒を飲み始めてしまう、『コロナ・スリップ』です。"3密"(密閉・密集・密接)の観点から自助グループの集いができなくなっていることが大きな要因です」(吉本さん)

アルコール依存症の場合、同じ病を抱える人とのコミュニケーションが「再飲酒の大きな抑止力」になっていたはず。人とリアルに会って話ができないことは、アルコール依存症を抱える方々にとって、大きな影響を及ぼしているようだ。オンラインで集まるにしても、Wi-Fiやパソコンなど環境が整っていない方も少なくない。

「診療所に通われているのは『ここに来なくなると、お酒の量が増えちゃうかも…』という方。コロナの影響が東京ほど深刻な地域ではないので、多くの方が通院を続けています。ただ通院間隔が2カ月に1回など少し長くなったり、県外の方は電話などのオンライン診療になったりしていますね」(吉本さん)

吉本さんは、コロナ禍における酒量の増加をどう見ているのだろうか?

「感染症の大規模流行は、『災害』の一つです。これまで会社に通勤していたのがテレワークになり、子どもや家族が毎日家にいたり、と環境が激変しました。コロナがきっかけで休職あるいは失職し、精神的に大きなダメージを受けた人もいます。ストレスを抱え、その解消法としてお酒を選んでしまう人が多いのでしょう。また通勤時間がないことで時間に余裕ができ、外部の監視の目がないというのも酒量が増える原因になります」(吉本さん)

さらに「ジムやヨガスタジオ、マッサージやエステなどが閉鎖され、ストレス解消ツールの選択肢が少ないのも酒量を増加させる一因」と吉本さんは付け加えた。

「この変化にすぐ順応できる方は心配ないのですが、そうではない方は、何とかしてこの不安を忘れたい、ストレスを解消させたいという思いから、ついお酒に走ってしまうことも。また"ステイ・ホーム"が続くと生活にメリハリがなくなるため、お酒を飲むことで一区切りつけようとする人も多いようです」(吉本さん)

ストレスを緩和させるために酔っても、根本的な問題の解決にはならないし、現実は変わらない。頭では理解していても、つい飲んでしまう…。酒量の増え方は、その人にとってのストレス指数を表しているのかもしれない。

「外飲みが好き」という人が抱える問題

では、この状況下で、実際に酒量が増えやすいのはどういう人なのだろうか?

「最も危険なのは、アルコール依存症をはじめとする精神疾患を抱えている方です。そして、監視の目がない一人暮らしも、ストッパーがないので危ないですね。また、ストレス解消のツールがお酒で、これまで外飲みがメインだった方が、終電を気にしなくてずっと飲んでしまうのも問題です」(吉本さん)

ちなみに、外飲みがストレス解消の一助になっているのは、筆者もそうだ。 外飲みは、単に非日常の場所で酒を飲むことがストレス解消になるだけでなく、誰かと一緒に愚痴を言ったり、バカ話をすることが心のデトックスになり、明日への活力となる。

それが"オンライン飲み"でも実現できるかと思い、試しにお気に入りの焼き鳥屋のテークアウトと酒を用意し、親しい仲間とやってみたが、通信状態が安定しなかったり、画質が悪かったりして、イマイチ盛り上がれなかった。「またねー」と通信を切った後、食べ終わった食器を自分で片付けるのも何か白ける。悪くはないのだが、リアルな外飲みと比べるとどこか物足りないのだ。

緊急事態宣言が解除された後、知り合いのSNSの投稿では、「やっぱり外飲みはサイコー」といったコメントが目立った。早く安心して外飲みができる日々が戻ってきてほしいものだ。

ストレスをためやすい人は酒量のコントロールを

話を戻すと、吉本さんは、「いわゆる『タイプA』と言われる方も危ない」とも言う。

「タイプAとは心理学の用語で、せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的な行動パターンを示す人を指します。このタイプは喫煙、多量飲酒などに陥りやすく、かつ日常的なストレスを受けやすい傾向にあります。協調性が求められる日本において、タイプAの行動パターンは表に出しにくいこともあり、外飲みでストレスを発散している人もいると考えられます」(吉本さん)

「酒量が増えたとしても、お酒を飲んで楽しい気分でいられるのであればまだいいのです。怖いのは、酒量が増えるにつれ、『オレなんかどうせダメだ』とネガティブになってしまう人。罪悪感や自責の念を払拭するために、さらにお酒を追加するようになると、ますます危ない」(吉本さん)

楽しいお酒なら良いが、逆に落ち込んでしまったり、「どうしてこんなに飲んでしまうんだろう」と罪悪感を持つようになると、かなりの危険信号。WHOが作成したアルコール依存症のセルフチェックには、「過去1年間に飲酒後、罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか?」という設問もあるという。

「緊急事態宣言が解除されても、感染拡大防止のため、今後も家にいる時間が長くなるのは必然です。アフター・コロナの生活様式に合わせた飲み方、酒量を今のうちに考えなければなりません。特に、飲んで罪悪感を抱いてしまうような方の場合、自死に至るケースもないとは限りません」(吉本さん)

そ、それは聞き捨てならない…。吉本さんの言う通り、今のうちに酒量をコントロールしておくべきだろう。「自粛生活で酒量が増えている = アルコール依存症へのプレリュード」と真剣に捉え、対策を練ることが必須である。

次回は酒量を減らす具体的な方法を、引き続き吉本さんに伺っていこう。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2020年6月5日付記事を再構成]

吉本 尚さん
筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授/附属病院 総合診療科。2004年筑波大学医学専門学群(当時)卒業。北海道勤医協中央病院、岡山家庭医療センター、三重大学家庭医療学講座を経て、2014年から筑波大学で勤務。東日本大震災を契機に「WHO のアルコール関連問題のスクリーニングおよび介入に関する資料」を翻訳するなど、アルコール問題に本格的に取り組み始める。アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークの幹事として、プライマリ・ケアを担当する立場からアルコール対策に関わる。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・家庭医療指導医。2014年10月、第3回「明日の象徴」医師部門を受賞。

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