新型コロナで浮き彫り 東京の危うさと地方の価値『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』より

福島県会津若松市に2019年オープンした企業の集積拠点「スマートシティAiCT(アイクト)」
福島県会津若松市に2019年オープンした企業の集積拠点「スマートシティAiCT(アイクト)」

「今まさに『地方創生』の千載一遇のチャンスが到来しているのではないか」。コロナ後の日本に、そんな可能性を見いだしているのが、ともに東日本大震災後、福島県会津若松市で、地方創生に取り組んできた経験を持つアクセンチュアのコンサルタント、江川昌史、藤井篤之の両氏だ。チャンスはどう生かしていけばよいのか。その具体策を2人による新著『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP)からみていこう。

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『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP)

新型コロナウイルスの経済的影響は、リーマンショック時を超える深刻なものになると予測されている。経済的には深い傷を負うことになったが、その一方で、私たちがこの経験から学んだことも少なくない。

例えば、今回、人口が密集した大都市の脆弱性が露呈し、東京や大阪はロックダウン寸前まで追い詰められた。これまでは、一極集中の弊害を指摘する声があっても、誰も耳を貸さず、「密集こそ善」と言わんばかりに、大都市への人口集中が加速していた。しかし、大都市の高密度がリスクと感じるようになれば、人々の価値観や行動は変わってくる可能性もある。

その意味で、相対的に評価を上げたのは、地方部だった。地方部は、感染リスクが低いだけでなく、コロナ禍によりテレワークや遠隔診療、オンライン教育などが広まったことで、これまで地方の弱点とされていた部分が解消される可能性が出てきた。テレワークや遠隔診療は、平常時ではなかなか試そうとするインセンティブがなかったが、コロナ禍でやむを得ずにやってみると、「意外にできる」ことに気づく。コロナ禍でのこうした「非日常」的経験は、人々の価値観を変えるほどのインパクトがあった。

30年後、地方の生活コストは東京の約半分

同書の中に、東京都市部と地方部の将来(2050年頃)の生活コストを比較したシミュレーションがある。

様々なテクノロジーをフル活用できるようになる将来において、都市部と地方部の生活コストがどう変化するのか、簡単な試算をしてみたので紹介したい。
まず、結論から言うと、現状では1人当たり生活コスト差は30%で地方部のほうが安いが、2050年頃を想定したシミュレーションでは、生活コストが最大45%まで広がる可能性があり、コスト的には地方のほうが圧倒的に住みやすくなることが予想される(ここでいう都市は東京23区を、地方とは町村もしくは人口5万人未満の市を指す)。
このことは、所得の多寡にかかわらず、より多くの人がQoL(クオリティ・オブ・ライフ)を損なわずに持続的に生活することに対して追い風になる。つまり、地方に人を呼び込むうえではテクノロジーの進化を積極的に受け入れ、生活必需コストを最小限に抑えることができるかどうかが、重要な要素になる。
(「第4章 地方創生を後押しする最新テクノロジー」p138)

このシミュレーションによると、現状でも地方の生活コストは東京より約3割安いが、この先、東京と地方部の生活コストの差はどんどん広がっていき、30年後には東京の約半分のコストで地方居住できるようになるという。ここまで差が広がると、地方移住も現実的な選択肢として浮上するかもしれない。

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