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将棋と落語は似たセンス 藤井七段に届けたい言葉遊び

立川談笑

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NIKKEI STYLE

将棋界が熱いですねえ。連日、藤井聡太七段の話題でもちきりです。そして、そんな将棋と落語はどちらも古くから伝わる日本の文化です。2つの世界は遠いようで意外に近い。今回は、落語的な視点から将棋の魅力に迫ってみます。

3年前のこと。落語界ではちょっと困ったことがありました。というのも「新規で扇子が作れない」事態になったのです。我々が普段、高座で使うのは白扇。どんな演目にも邪魔にならないよう白の無地。よく見ると端に名前がちょこっとだけ書いてある。落語家それぞれがオリジナルデザインの手ぬぐいを作っているのは知られていますが、実は扇子も同様なのです。

配る白扇が確保できない

特に真打ち昇進披露には必須で、のし袋に入った名入りの扇子を関係各位に配るのが恒例です。またほかにも、名刺代わりに使ったり、独演会で販売したり。ところがそれが作れない。私も困った本人です。いつも発注する扇子屋さんに問い合わせたら「いやあ、扇子の数が確保できないんですよ」と。

扇子不足の原因は藤井聡太フィーバーなのでした。すい星のごとく現れた若き天才棋士の名入りの扇子が飛ぶように売れていて、日本中の在庫がみんなそっちに行っちゃったんだって。「あれあれ? 扇子なんて普段使いや日本舞踊用だとか様々あるだろうに、なぜよりによって落語家用の扇子が……?」と思ったら、棋士が使うのと落語家が使うのとは同一の規格なんですって。これは私も知らなかった。

とまあ、今回はこんな無駄知識が続きますよ。わはは。

落語家に将棋好きは多くて、昔の楽屋には将棋盤があるのが当たり前だったといいます。出番直前まで将棋を指していて「じゃ出番だからこのまま待っててね。すぐ戻るから」なんと言い残して高座に上がったりとか。

その昔、東京・日比谷にあった東宝演芸場の楽屋にも将棋盤があったそうです。先日、それが現存するとの写真入りの新聞記事を目にしました。桂文我(かつら・ぶんが)師匠が保管されているという、その盤面の裏には名人たちの名前がずらり。古今亭志ん生、五代目柳家小さんなどなど。みなさん将棋が好きだったんですね。

当時の同好会が「待った倶楽部(くらぶ)」。この名称は「あっと! その一手、ちょっと待った!」と、下手同士が対局する、いわゆる「へぼ将棋」で飛び出すセリフがもとです。そんな落語家らしい自嘲的な名をあえてつけているあたり、私なんかは逆に(ほほう。皆様意外に本気だったのね)とニヤリとしてしまいます。

将棋は落語の演目の中にも登場します。

筆頭が「浮世床」。床屋に町内の若い衆が集まって、いろんなことをしてうだうだしている。それだけの話です。将棋を指したり、本を読み聞かせたり、色っぽい恋の話をしたり。いくつかのシーンで構成されているので、高座では1シーンだけでもいいし、2、3シーン続けてもいい。時間調整には持ってこいの話でもあります。本と将棋の部分を演(や)ったときには楽屋のネタ帳に「浮世床 本~将棋」と記録されます。

本編はこんな感じ。夢中で将棋を指している二人の会話です。

「そっちの持ち駒はどうだい?」「えーと、金、銀、王と歩が3枚かな」「金、銀、王に、歩が3枚か。となると、こっちは……」。わはは。まさにへぼ将棋。だらだらと楽しいだけの時間が過ぎていきます。

「将棋の殿様」という古典落語もあります。将棋に凝ったお殿様が、文句が言えない家来たちを相手にわがまま三昧の対局で勝ち続ける話です。今風にいうならパワハラ将棋。そして最後には立派な家来に痛烈なしっぺ返しをくらいます。

この落語を初代三笑亭可楽(さんしょうてい・からく)が将軍・徳川家斉の前で語った、などという逸話が残っていますが、私は眉唾だなあと思っています。初代可楽は200年ほど前の江戸落語草創期の人。初代立川談笑も同じころ活躍しました。

しかたなかばし神田橋

話は変わりますが。素人が将棋を指しながら何事かつぶやく。あれが大好きです。盤面に集中しながら、その時々の気分で適当なことを口に出す。「おおっと、そう来ましたか。それならこちらは、思い切って……」なんて。いい年したおじさんたちが妙に無邪気に見える瞬間でもあります。そしてそんな時に使われる定番のセリフがあるのです。江戸前の軽口。さしたる意味もないのに何か言いたいだけ。バカバカしい中から、大好きなものを紹介します。

「あららー。それ見たことか。『みたかなかのきちじょうじ』、と」

三鷹、中野、吉祥寺。中央線づくしの軽口は意外に新しいのかもしれませんね。ずっと古いところでは、

「仕方ないな。『しかたなかばし神田橋』」

江戸では多用された軽口でした。なんなら今でも口をついて出る人がどこかにいるはずです。「仕方ない」に中橋をかけた軽口。中橋とは、早くに撤去された後も長くその存在が語られた橋だとか。中橋の「いまはもう『ない』」のイメージを引きずりつつ、まるで関係のない神田橋まで引き連れてくる。いわゆる「ノリ」です。いいフレーズ。軽口をあとひとつ。

「さあて。『どうしてくりょう、さんぶにしゅ』」

どうしようかと迷った時の決まり文句です。「どうしてくれよう」と「くりょう(九両)三分二朱」をかけています。江戸時代の金銭勘定で、10両のほんのわずか手前が9両3分2朱。「十両盗めば首が飛ぶ」として10両以上の盗みは死罪にあたる時代の「十両」は大きな区切りでした。手前ぎりぎりで寸止めするのが、9両3分2朱。生きるか死ぬかの瀬戸際っぽい言葉遊びとして面白がられたのでしょう。

最後に、江戸情緒と将棋にまつわる歌。「とっちりとん」というスタイルの歌がはやりました。言葉遊びをふんだんに取り入れた技巧的な歌詞を三味線にのせて歌う、粋で陽気な歌です。そのひとつ、「将棋のとっちりとん」を紹介します。将棋にまつわる言葉遊びが詰め込まれています。さて、いくつわかりますか?

将棋さす手を つくづく見れば
やっぱり恋路も同じこと
この手できくのか、きかぬのか
ししゃをとばして呼び出し
かくの次第をこまごまと
語れど、先の腑(ふ)に落ちず
とんだ桂馬にはねられて
無駄に使った金銀は
つまらないでは ないかいな

チャチャン、チャン、チャン!と。ええ、おやかましゅう!!!

立川談笑
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
立川談笑、らくご「虎の穴」 記事一覧はこちら

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