広瀬アリス、女優10位に躍進 場数を踏んで知ったこと
2020年度のタレントパワーランキング女優部門で広瀬アリスが10位にランクイン。18年29位、19年22位から急上昇を遂げた。ドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』『トップナイフ─天才脳外科医の条件─』、映画『AI崩壊』などの話題作に次々と出演し、CM出演も多数。『アナザースカイII』のMCやバラエティへの出演など、明るく気さくな性格で活躍の場を広げている。この1年を振り返ってもらった。
日経エンタテインメント!では、2008年から年1回「タレントパワーランキング」を発表している。株式会社アーキテクトが3カ月に1度実施している、タレントの「認知度(顔と名前を知っている)」と「関心度(見たい・聴きたい・知りたい)」の調査を基に、2つのデータを掛け合わせて「タレントパワースコア」を算出、ランキング化したものだ(調査の詳細は総合編の「タレントパワー サンドウィッチマンが堂々の2連覇」をご覧ください)。
タレントパワー調査の女優編のトップ10には、主役を何度も経験する女優が居並ぶが、25歳以下は広瀬アリス・すずの姉妹のみ。特に姉のアリスは急上昇を遂げた。
「(ランキングの結果に)素直にうれしいです。楽しくお仕事を続けていますが、プラスのご褒美のようでありがたいですし、そう思ってくださっている方がいるんだなと思うと、もっと頑張りたいと励みにもなります。自分の感覚としては『人気が出たな』とかはなく、5年前も10年前も変わらないです。
これまで年上の方とのお仕事が多かったんですが、『ラジエーションハウス』は本田翼さんが2歳上、窪田(正孝)さんが31歳で、久々に年齢が近い方がいらして。この現場はとにかくチームがめちゃくちゃ仲良かったです。みんなでお昼ご飯や夜ご飯を食べて。
チームプレイでぽんぽんとセリフをうまくつないでいくシーンがたくさんあったこともあり、どんどん仲良くなり、1話と最終話ではお芝居の空気も大きく変わっていきました。お芝居の基本かもしれませんが、今の自分にはすごく大事な経験だったと思いました」
次に出演した連続ドラマも医療現場が舞台。『トップナイフ』では、自称天才の脳外科医・小机幸子を演じた。新人らしい怖いもの知らずの振る舞いや"初恋"にあたふたとするさまが、骨太な群像劇の幅を広げ、コメディエンヌとしての広瀬の魅力を改めて印象づけた。
「医療ものとは縁がなさそうだと思っていたのに…私、そんな感じに見えるのかなあ(笑)。医療ものって、患者さんの命と向き合う話ですし、専門用語も多い。その中でも私の役は、クスッと笑えてフワッとした気持ちになるような存在になればいいかなと思いました。
天海(祐希)さんが本当にカッコよかったですね。現場も引っ張ってくれましたし、もう『姉さん、ついていきます!』って自然となりました。手術シーンでも誰よりも練習されて監修の方に質問なさっていたり。自分自身も怠けないように努力しているつもりですが、大先輩のその姿を見て、さらに頑張らなくちゃと思いました。
でも、あんなに緊張する連ドラもなかなかなかったです(笑)。私も『ちょっとここ、アドリブで行こうかな?』とかドキドキしながらやりましたが、みなさんアドリブがお好きで。私が変なことを言って天海さんがチラッとこちらを見るシーンで、めちゃめちゃ二度見されたりとか。椎名(桔平)さんもどんどんセリフを変えてくるし(笑)。臨機応変に対応して、10代の頃に戻ったような緊張感を味わいました」
20年1月公開の映画『AI崩壊』では、大沢たかお演じる天才科学者を追う捜査一課の刑事・奥瀬久未を演じ、「お父さんよりも年が離れている」三浦友和演じるベテラン刑事とバディを組んだ。
「最初は"三浦さんとバディ"というのが想像つかなくて。面白い"デコ"と"ボコ"の関係性ができればいいかなと考えました。先輩に対して先輩とは思ってない態度で、でも生意気すぎず。三浦さんがなんでも受け止めてくださるので、いい感じにできたのかなと…三浦さんのおかげです。『AI崩壊』の舞台は、AIが人間の生活の中心にある世界なんですけど、『三浦さんと広瀬のシーンが出てくると、アナログだからホッとするんだよね』って(入江悠)監督やプロデューサーさん(北島直明氏)に言っていただけて、すごくうれしかったです。
大掛かりな撮影も貴重な経験でした。なかなかお借りできない貨物船で一日掛かりで撮影させていただいたり。ワンシーンのために岡山に行くこともあり、時間をかけてじっくり撮った作品でした」
役に緩急をつけて、変化を楽しみたい
広瀬は意識が大きく変わった作品として、17年の連続テレビ小説『わろてんか』を挙げた。その時、壁にぶち当たって鍛え上げられた強さが、若手ながら安定感のある、今の広瀬を形成している。
「朝ドラはいい意味で『もうやりきったからいいや!』って思ってます(笑)。自分にとっては試練の連続で、方言だけでも苦戦したのに、稽古事でも2週間に1回は新しいことを学んで。ちょっとしんどかったです。漫才も多かったし。その頃は寝ても『舞台に立って漫才のセリフが一切出てこない』とかの夢ばかり見て、本当に追い詰められてました。おかげさまで強くなりまして(笑)。
でも、撮影が終わってから『ここは普通でいいけど、こっちはアップテンポにしたほうがセリフが面白くなるかも』とか、そんな嗅覚がついたと感じています。
仕事のうえで意識しているのは、全員が楽しく働ける現場だといいなということ。いつから思ったんだろう…場数ですかね(笑)。場数を踏まないと気づかないものって、たくさんあると思うので。
撮影中も夜になれば疲れてくるし、疲れが続けば士気が下がる。でも同じことをするなら、楽しくて、いい疲れのほうがいいじゃないですか。現場のチームワークが良いことが大事だな、ってここ数年思うんですよ。共演者の方やスタッフさんに自分から話しかけることを心掛けています。忙しくてもちょっと余裕を持つことが大事じゃないかと思っているんです」
女優として12年目。謙虚な語り口ながら、「やりきった」「場数を踏んできた」と語る姿に、自身が積み重ねてきた経験と努力への自負を感じる。今後、広瀬はどんな女優を目指したいのか。
「バラエティで見せるようなハッピーで『イェーイ!』みたいな姿が私の素ですが(笑)、だからこそ女優業では、ガラッとイメージが変わるような役に挑戦してみたいです。やっと医療ものや教師など役の幅が広がりつつあるところなので、もっといろんな役を演じてみたいです。例えば悪役。出てきた瞬間視聴率が下がるくらい嫌われる役とか(笑)。自己中かもしれませんが、演じる役に緩急をつけて、自分の中での変化を楽しめたら面白いだろうなと思っています。
今は撮影がストップしてしまって。でも、今しかできないことも結構あるんじゃないかな。2カ月近く規則正しい生活を送ることもなかなかないので、体質改善を頑張っています。撮影が再開した時、休んでいたぶんストレスがかかると思うので、そこに対応できる体づくりを時間をかけてじっくりと。食べるものを変えてみたり、運動を頑張ってみたりしています。とても楽しみにしている作品があるので、早く元に戻ってほしいです」
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2020年7月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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