「鮨という漢字は、『魚へんに旨い』と書きますよね。わたしは魚をおいしく召し上がっていただくための仕事をすることで、お客さんにすしというものを味わっていただきたいんです」。そう語るのは2018年6月、東京・東銀座にオープンした「銀座 聖起(まさき)」店主の嶋倉聖起さん。冷蔵庫にある素材を使って炒飯など簡単なものを作るのが好きだった小学校・中学校時代を経て、高校時代に進路を決める段階になると調理師専門学校進学の道を選んだ。
1.有名ホテルなどで研さんを積んだこの道38年の職人が独立
2.養殖物ではありえないサイズの「天然大車エビ」の食感は圧巻
3.ふっくら軟らか「穴子」、塩気と酸味のバランス絶妙な「小肌」
「当初はフレンチ志望だったんですけど、高校3年生のときにすし店でアルバイトをさせてもらったことで関心が向き、和食のクラスに入りました」(嶋倉さん)。
卒業後、2年ほど自由が丘の店で修業を積むと、今度は渋谷のすしバーに勤務。さらにその後、24歳で千葉県・舞浜の「ヒルトン東京ベイ」すし部門にサブチーフとして入社して17年間研さんを積んだ後、「シェラトンホテル」や「シャングリ・ラ ホテル東京」内の「なだ万」すし部門チーフとして13年間活躍した。
「朝早くから夜遅くまでの勤務は当たり前でしたし、厳しいことを言われることもしょっちゅう。それでも、負けず嫌いなんで『今に見てろ』と続けてきました。でも、今になって振り返ると、叱ってくれたり助言をくれたりする人に出会えたことはありがたいことだったなと思います」(嶋倉さん)。
根性で続けてきた結果、ついにすべてが整って独立のタイミングが訪れた。ようやく手にした自身の店は樹齢250年の木曽ヒノキのカウンターをはじめ、木目調のインテリアで統一された心落ち着く空間。接待に使われることも多いため、カウンター下に電源コンセントを配置するなどの配慮もさすがだ。
料理に使う魚は季節ごとの旬のものなどを厳選する。

お造りは本マグロ赤身、シメサバ、コハダ、キンメダイと色味のバランスもよく、見た目の美しさも秀逸。下味がつけられたマグロは下に敷かれたヤマイモの千切りと一緒に口に運ぶと、山かけのように楽しめるのもうれしい。