大成建設の国際設計部で働く尼崎親良さんは、現在、心不全で入院中の父親が退院したら、介護と仕事の両立生活が始まることになる。

同社では06年から女性活躍推進とともに、介護離職をさせないために社員の支援に注力している。法定日数を上回る介護休業や介護休暇の制度を整え、デイサービスの送迎時間などに応じられるよう、勤務時間の繰り上げ・繰り下げといった支援策をそろえる。管理職の理解を深めるため、本人と上司、人事担当者の「三者面談」を実施する。

大成建設では仕事と介護を両立する社員、上司、人事担当者の「三者面談」を実施し、サポートする=同社提供

「会社や行政の制度を組み合わせれば色々な選択肢ができる」と尼崎さん。一方で「平時でも大変なのにコロナという想定外が起きた。入院中の父親と面会できず、今後の話もできない」と不安もある。

人材いきいき推進室の塩入徹弥さんは「感染拡大によって、介護施設などに親を託し、出社している社員の状況が変わる可能性はある。次の手立てを考えなければならない」と明かす。

在宅勤務の難しさとして、第1波では休園・休校中の子供の世話が注目された。働く介護者にも介護サービスの停止や利用控えが影響した。新常態では状況に応じてケアマネジャーや施設など、複数の関係者との調整が生じることを前提にする必要がある。

現状では女性に偏りがちな介護だが、未婚率の高まりや共働き世帯の増加を背景に、男性も担うことになる。介護問題に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子氏は「企業の介護者支援は長期休業の仕組みよりも、テレワークや短い単位の休暇といった柔軟な働き方を今後も続けられるようにすることが重要」と指摘。また、介護が始まるのは要職に就く年代のため「柔軟な働き方への罪悪感が強くなりがちになる。企業は介護前から情報提供をしていくべきだ」という。

労使で最適解を模索

介護サービスは高齢者の暮らしに欠かせないものであると同時に、仕事をしながら高齢者を見守る会社員にとっても重要なインフラだ。今回、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、デイサービスを中心に休止や事業縮小が相次いだが、同様の事態が起きたときにサービスをどう維持していくかが今後の課題になりそうだ。

世間では、これまでやりにくい雰囲気もあった在宅勤務やテレワークが緊急的に広がった。取材では「このまま在宅勤務が続けられたらいいのに」や「コロナがある限り在宅勤務ができて助かる」など、柔軟な働き方を続けてほしいという声は多かった。ただ企業からは「生産性が確実に落ちている」との見方も出ており、労使が知恵を出し合って双方にとって持続可能な働き方の模索が求められている。

(高城裕太)