上場企業で「CFO」を任されている高校生がいる。ミドリムシを使った健康食品やバイオ燃料開発を手掛けるユーグレナの小沢杏子(おざわ・きょうこ)さん(18)。CFOは「Chief Future Officer(最高未来責任者)」の略だ。同社が10代を集めた「フューチャーサミット」を運営し、社会の持続的な発展に貢献する経営を考え、株主総会や取締役会にも出席する。よりよい未来のため乗り越えるべき課題を「自分ごと」と捉え、自身に「有言実行」を課す行動力が、周囲の大人をその気にさせはじめている。
「21年にプラ半減」決定引き出す
「消費者が意識しなくても環境に配慮した行動をとれる仕組みを、企業が構築すべきでは」。2020年3月末、東京・港のユーグレナ本社で開かれた取締役会で、小沢さんは出雲充社長ら7人の役員を前に訴えた。フューチャーサミットのメンバー8人と、数カ月の議論を経てまとめた提言。同社にとっては「ハードルが高いものがあるが、すべて会社としてやりたい内容」(永田暁彦副社長)だった。

同社は取締役会の全員一致で提言を経営方針とすることを決議し、6月には第1弾の具体策を公表した。商品に使う石油由来プラスチックの量を21年中に半減させる目標を定め、(1)飲料用ペットボトル商品を廃止する(2)一部商品につけてきたストローの有無を消費者が選べるようにする――ことを打ち出した。
小沢さんは19年10月にCFOに就任。以来、フューチャーサミットのメンバーとともに月1回の会議のほか、非公式なオンラインのミーティングを多い時で週4回開いてきた。
「全社員がガソリンや電気を使う通勤手段をやめ、自転車にするというのを1週間やってみたら。運動にもなっていいはず」「プラスチックのストローはあるのが当然という前提で考えるからなくならない。最初からないと思えばいい」。世の中の「当たり前」に疑問を持ち、だれかに忖度(そんたく)することなく発言するのがメンバーの役割だ。ストロー廃止の議論が膠着したときには、小沢さん自身が現状維持ではなく、前向きな行動につながる方向性を打ち出した。スーパーで買い物客に「レジ袋は要りますか」と聞くことがエコバッグ浸透につながった事例を挙げて「ストローを利用しない行動が定着するための仕組みを考えよう」と呼びかけた。
多くの問題意識を持ったメンバーたちの提案は、最初の2カ月で100件に上った。小沢さんがリーダーとして心掛けたのは、年齢や興味が異なるメンバーそれぞれの能力を最大限、引き出すこと。時には1対1でじっくり話し合い、英語の方が理解しやすいメンバーには後で個別に補足した。3カ月後には「一緒にやり遂げよう」という空気を肌で感じられるようになった。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定がずれ込んでいるが、現在は気候変動などの問題を誰もが「自分ごと」にできるような「意識改革」を生み出す企画を考えている。「『こうした方がいいよね』ではなく『こうしないと困ったことになるよ』というとらえ方をしてもらえる機会にする」という。