小沢さんがCFOに応募したのは、高校で取り組む研究でモヤモヤした思いを抱えていたことがきっかけだった。研究のテーマは「アントシアニンと腸内環境」。様々な健康効果が期待される色素成分に関する研究で、難病の症状軽減や予防につながる可能性のあるものだが、実験に必要な高価な材料は使用が限られる。「高校は3年間しかないのに」。思うような研究を続けるには何らかの資金支援が必要だと焦りを募らせているとき、新聞で目にしたのが「CFO募集 ただし18歳以下」という全面広告だった。「日本では研究者への支援が減っている。このままでは、優秀な頭脳は海外に流出してしまう」。実体験をまじえて訴えた危機感が、ユーグレナ幹部に伝わった。

実際に見聞きして「自分ごと化」することが、問題解決に動き出すカギを握る。こう考えるのは、中学時代から関心をもっている原発問題の影響が大きい。

中3の授業で、社会科と化学の先生、大学の専門家の話を聞く機会があったが、それぞれ見方が全然違っていた。自分も知識をつけていたつもりだったが、まだまだ足りないと痛感した。「知らないって怖い」。そこで福島第1原発事故の被災地に足を運び、関係者から話を聞いた。報道などで復興が進んでいる印象をもっていたが、原発周辺には無人のまま放置された街並みがあった。映画のセットとかと錯覚してしまような現実を目の当たりにしたとき、他人ごとではなく自分たちが向き合わなければならないと実感した。

フューチャーサミットで異なる意見をまとめ上げるときは、幼少期に海外で暮らした経験が生きた。小学3~5年のときに通った米国の学校で、日本人は自分一人だけ。同級生らが「私はこれができる」と主張する世界に戸惑った。日本では自らアピールしなくても「周りが気づいてくれるもの」だと思っていた。文化が違えば「当たり前」も変わる。広い視野で物事をみるよう意識するようになった。どんな意見も「それは違う」と切り捨てず、いい要素を引き出していく姿勢を大事にしている。

目標を掲げるのは簡単

問題意識を持ったときには「まず人に話してみる」のが小沢さん流だ(ユーグレナ提供)

通っている都内の高校では、バスケットボール部に所属。研究活動やCFOの仕事と両立できているのは「オンとオフを切り替えるタイプ」だからかもしれない。運動が得意なこともあって友人から「チーターとかヤマネコっぽい」とも言われる。何かの作業に打ち込んでいたかと思うと、急に思い立って4~5キロメートル走りにいくこともある。「周りの子たちにはマイペースと思われているかも」。学校ではCFOや原発の話はほとんどせず、スイーツの話題で盛り上がったり、下校後の寄り道を楽しんだりの日常を過ごしている。

CFOの任期は20年9月に終わる。世界がコロナ禍に直面するなか、改めて自分自身を見つめ直した。そして、自分がやりたいのは、生まれ育った国に貢献することだという思いを強くした。「自分たちの世代から、今以上に日本を盛り上げていきたい」。各国の市民が、母国をよりよくしようと動けば、世界がよくなる。何らかの分野で日本のために働ける力をつけたい、それが現時点の希望だ。

CFOの活動を通じ、フューチャーサミットの仲間はもちろん、大人からも影響を受けた。出雲社長や永田副社長が問題意識を分かりやすく語りかけて社員と共有する姿を間近で見ることができた。何よりも言葉と行動が一致する「有言実行」の姿勢を見習いたいと感じた。検討している「意識改革」の企画は、必ず任期中に有言実行したいことのひとつだ。

よりよい未来をつくりたいと考えていても、具体的な行動に迷う若い世代は多いだろう。小沢さんが悩んだ時の手だては「まず人に話してみること」だ。学校の先生に勧められ、原発に関する問題意識を新聞に投稿したことが、その後の可能性を広げた経験が大きい。「どこかに自分の葛藤をぶつけられれば、それが絶対次の一歩につながる。問題だと思うことはみんなと共有した方がいい」

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の認知度は高まり、取り組みを宣言する企業は増えている。「目標を掲げるのは簡単。きちんと実行する力があるかどうか、人も企業も問われている」。有言実行を口にする18歳の覚悟に、大人たちはきちんと応えられるだろうか。

(ライター 高橋恵里)

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