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世にも奇妙な絶景 火山のクレーターにできた氷の洞窟

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

クレーター氷河にできた「ゴジラ洞窟」と名付けられた穴の底へ、写真家のエリック・グース氏が降りてみると、そこには炎が作り出した氷の世界が広がっていた。

1980年5月18日、米ワシントン州で、カスケード山脈の一部をなすセントヘレンズ山が噴火した。この噴火で山頂は400メートル削られ、大量の土砂がノース・フォーク・タートル川へ流れ込んだ。時速500キロの猛スピードで噴き上げられた火山灰は上空24キロまで達した。大噴火の後に残されたのが、標高1900メートルに形成されたU字型の巨大な黒い火口(クレーター)だ。

火口の内側は、南側の壁にさえぎられるため、一年にわたって太陽がほとんど当たらない。そのおかげで、火口に降り積もった雪は夏になっても解けずに残り、クレーター氷河が生まれた。氷河の厚さは200メートル、広さは約1.3平方キロメートルに達している。今なお、この氷河は成長している。

氷河の表面を見ると、点々と氷の裂け目がある。これらは氷の洞窟への入り口だ。氷の下の火口から噴き出す高温の火山ガスのために、氷河の内部が解けて縦横に穴ができ、ドーム型の空間を作り出しているのだ。

グース氏は、研究チームと一緒に数年前からこの洞窟を探検している。研究者たちは、詳細な地図を作成したり、洞窟にすみついた生命を調査している。水蒸気をたっぷり吸いこんだ土にはキノコや花、コケが生え、氷の下には微生物も発見された。鳥や風に運ばれてきた種子も見つかっている。種子は移動する氷の中で数カ月~数年の間休眠状態にあったが、洞窟の中で温められたものは発芽していた。日の当たらない暗闇の中で太陽を求めて、木の芽は驚くほどの速さで成長していた。

グース氏は、最近になって私(筆者のクレイグ・ウェルチ氏)にこう話してくれた。「洞窟の最深部にたどり着いて、自分たちがここへ足を踏み入れた最初の人間なのだと思ったら、本当に気持ちが高揚しましたよ」

グース氏と調査隊の一行は、この「氷河洞窟」に最初に足を踏み入れた人間であり、同時に最後の人間になる可能性がある。既にセントへレンズ火山国定公園の大部分が全面立ち入り禁止となっているからだ。この火口にできた氷河への探検も研究目的のため、特別に許可されたものだ。脆く壊れやすい環境を守る目的もあるが、とにかく危険であることが最大の理由だ。

探検隊はロープを使って洞窟に入る。ロープと体をつなぐハーネスには有毒ガス探知器を取り付ける。グース氏は、岩に挟まれて身動きが取れなくなったことがあった。また、悪天候のため迎えのヘリコプターが着陸できず、チームメンバーとともに洞窟で一夜を明かしたこともあった。

これら氷河洞窟は一時的な産物にすぎず、いずれは消滅する運命にある。洞窟だけでなく、セントへレンズ山全体が今も変化し続けている。

探検隊を率いるのは、米森林局の洞窟救助の専門家であるエディ・カータヤ氏だ。同じくワシントン州にあるレーニア山やオレゴン州にあるフッド山の頂でも氷の洞窟を探検した経験もあるカータヤ氏だが、セントへレンズ山の「超高速で」変化する世界は特に魅力的だと話す。

「文字通り自分の足元の地面が動いている場所というのは、めったにありません。新しいものが次から次に地中から現れているのです。これほど活動的な風景を見たことがありません。本当に驚異的です」

すべてが変わっていく火山

噴火から25年が経過した2005年の春、私はシアトルにある自宅からセントへレンズ山のジョンストン・リッジ観測所まで車を走らせた。ここからは、火口を一望できる。その前の年、再建期に入っていた火山は音を立てて煙を吐き出していた。米地質調査所の科学者が、最近、火口で拾ったという石を見せてくれた。ほんの数週間前には、これがまだ液体の状態で、地下の奥底から湧き上がってきたマグマの一部だった。その冬、再びマグマの流出が始まった。

火口の地中から顔を出した小さな新しいドームは、わずか数カ月で100メートルに膨れ上がった。氷河がその周りを埋めるようにして成長し、そこへさらに大きな洞窟が形成された。

「山というと、永久に動かないものというイメージがあります」と、生態学者のエリック・ワグナー氏は口を開いた。しかし、現在残っているセントへレンズ山の大部分はエジプトのピラミッドよりも新しいものなのだ。山は約140年ごとに噴火を繰り返し、周囲の生物もそれとともに消滅と再生を繰り返している。ワグナー氏は、2020年に出版された『After the Blast: The Ecological Recovery of Mount St. Helens(噴火の後:セントへレンズ山の生態系回復、未邦訳)』を執筆した。

ワグナー氏が話を聞いたある研究者によると、1980年の噴火後1年間は、生態系が大混乱を起こしていたという。辺り一帯はおびただしい火山灰と土砂に覆われ、動物も植物も乏しい栄養を奪い合うようにして必死に生きていた。しかし、やがて火山灰の薄い膜が保水力を向上させ、土に栄養を与えた。米国北西部の太平洋岸に沿って広がる豊かで多様なベイマツの森も、はるか昔同じようにして、セントへレンズ山の噴火で降り積もった火山灰の層から生まれたという。

最後に噴火してから40年が過ぎ、噴火前に生息していた動植物も山に戻りつつある。だが、その数も生息地も完全に元通りにはなっていない。今もここは氷と炎が入り混じって激しく変化している。そこから何か新しいものが生まれるのは、まだ先のことだ。

ワグナー氏は言う。「魅力的で、複雑で、美しく、それでいてもどかしい風景です。これを目にすることができて、幸運です」

次ページでも、現在のセントへレンズ山の様子と、炎がつくった氷の洞窟の内部をご覧いただこう。

(文 CRAIG WELCH、写真 ERIC GUTH、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年6月14日付の記事を再構成]

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