結論先延ばし、ろくなことはない

――15年12月期は上場後初の最終赤字に転落します。

「目標の期限までに収益を改善できなければ、聖域なく売却する、と決めました。ブラジル事業だけでなく、オーストラリアの飲料や乳製品事業、国内飲料のキリンビバレッジも低収益事業と位置づけました」

「社員には動揺が広がったようですが、冷静に構造改革を進めました。私の態度は一貫しています。逃げない、恐れない、ごまかさない。繰り返し胸に手を当てて考えました。ブラジル事業を売らない選択肢が、キリンという会社に本当に求められているのか。それで最終的に売却を決めました。国内飲料事業は生茶などのリニューアル効果や商品を絞り込んだことで、営業利益率が大幅に改善して今に至ります」

「誰かに遠慮し、結論を先延ばししていないか。お客様本位という原点を忘れていないか。社長は会社の良心たれ、本当に誠実な経営をしているか。常に自分自身に問い続けてきました。私の知る限り、歴史上、結論を先延ばしして良かったことはひとつもありませんからね」

新型コロナウイルスの影響で、消費行動も変わると考えている

――現在はクラフトビールや医薬バイオ事業などにも力を注いでいます。

「(14年のクラフトビール事業の参入当時は)一番搾りでスーパードライに勝たなくていいのですか、と言われました。決して方向転換ではありません。いままでのやり方だとそっぽを向かれます。ビールは素材や製法によって味や香りが多様な飲み物で、楽しい飲み物であると消費者は知っています。ビールの魅力に触れ、幅広さや奥深さを楽しみたい消費者が増えてくるだろうと思ったのです。クラフトビールへの参入が、飲食店や自宅に簡易型のサーバーを置く事業につながりました」

「医薬バイオなど健康関連事業に力を入れる理由は、キリンは創業当初からある発酵技術と、バイオ技術を最大限に生かしていくためです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、消費者の健康に対する関心が高まっていると感じています。消費行動も変わり、健康事業の需要が高まるとみています」

――新型コロナの影響が出ています。これからのリーダーに求められることとは。

「身につけるべきなのは構想力です。これは100回声に出しても身につきません。実践あるのみです。人のライフスタイルはこれから変わっていきます。今後のあるべき姿を想像して、将来を予想して現在どうすべきか導き出すことが求められます。答えは誰にも分かりませんが、それでもやらないといけないでしょうね」

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