夏のコロナ対策は傘で マスク焼け防ぎ人と距離保つ
新型コロナウイルスの感染防止策として、傘の効用に関心が集まっている。マスクを着用した暑い日の強い日差しを避けたり、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を自然に確保したりできるためだ。今年は紳士向けの品ぞろえが充実し、大きな傘がよく売れている。ユニークな形状や超軽量タイプ、小型扇風機付きなどアイデア商品も登場している。
今やメンズにとっても日傘はマストアイテム――。西武池袋本店(東京・豊島)ではこんなうたい文句で傘の販売コーナーを展開している。
目をひくのは傘の内側に小型扇風機が付いたスパイス(名古屋市)の「ファンファンパラソル」(税込み5280円)。電池ボックス(単3電池4本)とスイッチが持ち手に付いており、顔に向かって風が送り込まれる仕組み。最大で6時間の連続使用ができる。
生地の内側に遮熱や紫外線カットの効果があるコーティングも施されており、日傘としても雨傘としても使用できる。サイズは50センチ・60センチの2種類。ブラック、アイスブルー、グレンチェックなど様々な色やデザインを取りそろえた。「日傘というと従来は婦人向けというイメージが強かったが、コロナ感染拡大の影響で今年は日傘を買い求める男性客が目立つ」と同店の紳士雑貨担当者は指摘する。
外出時のマスク着用が当たり前になったことで、特に夏場に困りそうなのが暑さ対策。暑苦しいうえ、マスクの形に顔が日焼けしてしまうなどのトラブルが懸念されるからだ。扇風機付きの傘を持ち歩けば、外回りする際も快適に過ごせるというわけ。
「ゴルフなどスポーツやレジャーにも重宝しそう」(30代男性)「父の日のプレゼントにした」(20代女性)など人気が高まっている。
ソーシャルディスタンスを保つ観点からも傘は有効だ。西武池袋本店では5月23日~6月15日の3週間強の期間に、55センチ以上の大型傘の売り上げが前年比8%増えた。傘を差した者同士だと、1.5~2メートル程度の距離が自然に生まれるので新型コロナ対策になる。晴雨兼用の傘も多く、梅雨シーズン向けや日差しが強まる真夏向けにニーズが高まりそうだ。
ユニークな形状の傘も続々と登場している。開くと四角形になるムーンバットの「masu」(2750円)は男性向けの晴雨兼用傘。フレームが4本しかないので、畳んだ際の形状がスリムで約120グラムと軽い。「扇子のようにジャケットのポケットに入れて持ち運べる」と渋谷ロフト(東京・渋谷)の担当者は話す。
雨の日でも背負ったバックパックなどがぬれにくいのがワールドパーティー(大阪市)の「Wpc. バックプロテクト」の折り畳み傘(3740円)。畳んだ時は通常の形と変わらないが、開くと収納されていたフレームが伸びて、後方の幅約15センチ部分だけが本来の長さの55センチから70センチに拡大する仕組み。ビジネスマンや男子学生らに特に人気が高い。
軽さをトコトン追求したのがビコーズ(東京)の「エクストラライト・プレーンカラーミニ」(3190円)。カーボン素材を使用して重さを約69グラムまで軽量化した。ボールペンを数本入れたペンケースのような感覚で持ち運べる。
一方、ムーンバットの「ウラワザ」(5280円)は「3秒で折り畳める」のがセールスポイント。裏側に貼られた特殊シートがガイドの役割を果たし、シワにならずに瞬時に畳める。折り紙から着想を得たという。形状や機能などで特徴を打ち出したアイデア商品が目白押しだ。
新型コロナ禍をきっかけに全国の小学校で登下校時の児童に傘を差すよう呼び掛ける動きが広がるなど、傘を使う機会はこれまで以上に増えつつある。マスクと同様、より身近な存在になった傘のおしゃれも様々な場面で楽しみたい。(編集委員 小林明)
[2020年6月27日付 日本経済新聞夕刊]
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