ファイアストン買収で培った参謀力 体験的に描き出す三省堂書店有楽町店

2階ビジネス書売り場の平台に2列で平積みする(三省堂書店有楽町店)
2階ビジネス書売り場の平台に2列で平積みする(三省堂書店有楽町店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に一度訪れる準定点観測書店の三省堂書店有楽町店だ。緊急事態宣言に伴う休業が明けておよそ1カ月半たつが、ビジネス書の売り上げはなかなか元の水準に戻ってこない。自己啓発本やスキル本といった売れ行き上位の常連が振るわないという。そんな中、書店員が注目したのは、世界的企業の元トップが参謀の条件を語った一冊だった。

筆者はブリヂストン元社長

その本は荒川詔四『参謀の思考法』(ダイヤモンド社)。副題に「トップに信頼されるプロフェッショナルの条件」とある。著者の荒川氏は世界最大のタイヤメーカー、ブリヂストンの元社長。1988年に同社が米ファイアストン買収を決めた時期に40代で社長直属の秘書課長を務め、その後タイ現地法人社長、欧州現地法人社長、副社長を経て2006年から6年間、本社社長を務めた。こうした自らの体験をもとに企業の参謀役の思考と行動を説いたのが本書だ。

「はじめに」で現在のコロナ危機の状況に触れながら著者はいう。こんな時期こそ、「困難な意思決定に直面する経営層を、冷静な視点でサポートする『参謀』が不可欠です」。「そんな参謀役のみなさまにヒントを提供できれば」と本書執筆の意図を明示する。

参謀は「知的戦略家」ではない

「参謀は『知的戦略家』ではない」。著者が考える参謀の条件はこの1行に集約されている。昨今のビジネス界では「参謀」のイメージが「戦略立案」に偏りすぎており、もう一つの重要な役割「戦略実行の補佐」がおろそかにされがちではないか。その危惧が本書を書かせている。

22の思考法が5つの章に分けて示される。第1項は「従順であることは『美徳』ではない」。「なぜ?」と自分の頭で考える人だけが参謀へと成長すると説く。「本で学んだ『知識』は危険である」「『理論家』に優れた参謀はいない」などの項目も並び、現場に何度も足を運び、現場の現実を肌身で感じながら思考し行動した体験がつづられる。

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