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インダス川に迫る危機 水源、ヒマラヤの氷河で何が

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ナショナルジオグラフィック日本版

世界有数の大河、インダス川。ヒマラヤとその周辺の氷河から流れ出す豊かな水を運び、2億7000万人の生活を支える大河が今、ピンチだ。ナショナル ジオグラフィック7月号では、アジアの大河に訪れるかもしれない運命をリポートしている。

◇   ◇   ◇

チベット西部に位置する聖地、カンリンポチェ山。その周辺からは、4本の大河が源を発する。

ヒマラヤ山脈を東へ西へと流れるそれらの川は、尊い水の女神が伸ばした腕のように、海を目指して下ってゆく。流域のチベット、パキスタン、北インド、ネパール、バングラデシュには文明が芽生え、国家が成立していった。川の水をどう使うかは、流域の人間しだいだ。川に水をもたらすのはモンスーンと氷河の融解で、どちらも長い間、人の力が及ばない領域にあったが、今は人間も影響を与え始めている。

近年、地球温暖化の進行とともにヒマラヤ氷河が縮小している。このままでは、2050年頃からインダスなどの川の水量が減少に転じるという。そうなれば多くの人々の暮らしが脅かされ、インド、パキスタン、中国の関係は悪化するだろう。

ブラフマプトラ川をはじめ、ヒマラヤ山脈東部から流れ出す河川の水源は主に夏のモンスーンだ。地球温暖化が進み、大気中へ蒸発する水の量が増えれば降水量も増え、川の水量も増えるだろう。だがカンリンポチェ山から西へと流れるインダス川は、ヒマラヤ山脈、カラコルム山脈、ヒンドゥークシ山脈の雪と氷河が水源だ。

ことに氷河は、冬の降雪を標高の高い山岳地帯で氷として貯蔵し、春から夏に融解水を供給するという「給水塔」の役目を果たしている。これによって水量が安定していたのだ。インダス川下流のパキスタンや北インドの平野で、世界最大規模の灌漑(かんがい)農業が行われているのもそのおかげだ。農業用水を供給する氷河は、流域に暮らす2億7000万人の生命線なのである。

その氷河のほとんどが縮小しつつある。最初のうちは、氷河が解けた水によって、川の水は増えるだろう。しかし予測通りに気温が上昇し、氷河の融解が進めば、インダス川の水量は2050年を境に減少に転じる。

すでにインダス川流域の水の6割以上が人々に利用され、流域の人口も急増している。ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、国際的な研究グループが行った世界の「氷河給水塔」の現状分析が学術誌『ネイチャー』に掲載された。それによると、最も危機的な状況にあるのがインダス川で、河川の供給可能な水量に対する取水量の比率が高く、「政府の管理が甘い」ことを考えると、インダス川が「この負荷に耐えられる可能性は低い」という。

インダス川の未来をめぐるどんな議論にも、気候変動の影がつきまとう。インダス川と5本の支流が流れるインドとパキスタンは1947年以降、敵対を続けているうえ、源流域が中国領内にあることも問題を複雑にしている。

インド、パキスタン、中国はそれぞれ膨大な人口を抱え、資源を確保したい理由もたくさんある。また、いずれも核保有国だ。気候変動は気づかないうちに少しずつ進行するものと思われているが、インダス川流域ではそれが紛争の引き金となり、一夜にして世界情勢を変えることになりかねない。

押し寄せる氷河

インダス川は、インド最高峰を含む山々を通り、係争中の国境地帯を越えてパキスタンに入る。ヒマラヤ山脈がカラコルム山脈、ヒンドゥークシ山脈と出合ったところで、川は岩と氷に阻まれて南に進路を変える。そしてパンジャブとシンドの平野を流れ、1600キロ先のアラビア海に注いでいる。

川が進路を南に変える地点から60キロほど北で、私はグルキン氷河を歩いた。ここはインダス川の支流の一つ、フンザ川流域にあり、両岸には村々が点在し、果樹園が広がる。氷河は山の斜面から崩れてきた土砂で黒々としていた。頂上からの眺めは圧巻で、茶色の濁流が谷間を流れ下っていく。その先には、まぶしいほどの緑が広がる。畑や果樹園の葉を茂らせているのは、氷河に直結する水路網から引いた水だ。

2018年、グルキン氷河の近くにあるシシュパル氷河もすべり始め、1日37メートルも前進して、その先のハサナバードという町に迫った。「まるで列車のようでした」と話すのは、地元の地質学者ディーダル・カリムだ。氷河は農業用水路を覆い隠し、橋を破壊した。2019年10月に私が見たときは、1日30センチほどの速度に落ちていたが、それでも氷河としては速い。

そして、インダス川上流域では、もはや氷河の前進も後退も見られない。ここにあったホーパル氷河とバルプ氷河は著しく後退が進み、住民たちは苦心して整備した用水路網を放棄して、今は集落を離れている。

氷河の融解は切迫した脅威にもなる。解けた水は、下流に堆積した土砂や氷にせき止められて、池や湖を形成することがある。その水位が上がり、やがて限界を超えると、「氷河湖決壊洪水」(GLOF)を引き起こす。

2018年にはイシュクマン渓谷でそうした洪水が発生し、バド・スワトとビランズという二つの村が水浸しになった。住民の一人、48歳のナヤブ・カーンに話を聞くと、水が巨大な岩を押し流し、岩同士がぶつかる衝撃で地面が揺れたという。洪水は12日間続いた。流れてきた大量の岩は、イミット川をせき止めて水深6メートルの新しい湖をつくり、カーンの家を含めて42戸が底に沈んだ。

パキスタン北部では、気候変動が一因であるこうした洪水で700万人の生活が危険にさらされている。パス村のリンゴ農家で教師でもあるアシュラフ・カーンは、周囲にある三つの氷河は「3匹の竜だ」と話す。「私たちはその口の中で生活しているのです」。08年の冬には、「普通なら何もかもが凍ってしまう」時期に氷河の一つでGLOFが発生した。さらに19年8月には、夏の融解水が「ホテルと果樹園、パキスタン軍情報部の建物を押し流した」という。

パキスタンは人口およそ2億3000万の発展途上国で、国民1人当たりの温室効果ガス排出量は世界192カ国中の144位でしかない。

パキスタン南部の大都市では、こうした不公平感を口にする人がいる。一方、北部で話を聞いて驚いたのは、ほとんどの人が氷河融解の原因をよく知らず、世界の国々を非難しないことだった。

(文 アリス・アルビニア、写真 ブレンダン・ホフマン、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年7月号の記事を再構成]

[参考]ここでダイジェストで紹介した「大河に迫る水の危機」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2020年7月号の総力特集「世界の屋根ヒマラヤ」の1つです。このほかに、エベレスト初登頂の謎、氷の仏塔と気候変動、ユキヒョウ、世界一高い気象観測所など、多面的な切り口で人間とヒマラヤを紹介しています。Twitter/Insagram @natgeomagjp

ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年7月号[雑誌]

出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210円 (税込み)

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