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進化する「都市の顔」 円山・旭山動物園が描く未来

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NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスの感染拡大で休園を強いられた各地の動物園だが、オンラインでの動画配信が話題となるなど、改めてその存在が注目された。海外との交流を深める円山動物園(札幌市)の加藤修園長と、「行動展示」を日本中に広めた旭山動物園(北海道旭川市)の小菅正夫前園長(北海道大学客員教授)に、これからの動物園について語ってもらった。

コロナ禍で休園、動画配信に力

――動物園の本来の役割とは何でしょうか。

小菅氏 まず動物を見て、楽しんでもらうことです。それにはお客さんが動物に共感できることが必要ですから、その共感を生むことが(旭山動物園の)行動展示のテーマになりました。人間が他の動物と違うのは共感できることで、動物もだんだん共感の対象になりました。(人と人、人と動物が)うまく共感できないときには争いが起きます。

最近の人は「自分らしく生きたい」とか言いながら、周りを見て「おれ、こんなんじゃ生きていけない」ってこぼします。動物だって、トラはトラらしく、キリンはキリンらしく生きるべきですが、彼らは与えられた環境の中でそれができるのがすごい。チンパンジーはチンパンジーらしく生きます。だから、動物たちが、彼らのすごい能力を発揮できる装置をつくろうと考え、それが行動展示につながりました。

――コロナ禍による外出自粛などで人間らしさは余計に失われているようです。

小菅氏 いまの人間って、それほど自由じゃないんですよね。都市という空間は、動物園でいえば柵みたいなもの。でも動物園の動物たちは、そんなことでは悩まない。なぜなら、生きる目的がしっかりしているからで。人間よりずっとしたたかです。

加藤氏 だから円山動物園では、動物を「擬人化」するようなことはしません。動物のありのままの姿、すごさを見てもらいたい。人間っぽい動きを動物におぼえさせれば、一部のお客さんは喜ぶかもしれませんが。

――円山動物園が休園中、動画配信に力を入れたのはどうしてですか。

加藤氏 動物の魅力や生態のすばらしさを、家にいながら見てもらいたかった。学校が休みだから、勉強になるコンテンツも意識して入れました。でも、動画を配信して終わりじゃありません。動画では、においもしないし、気配も感じられない。動画はあくまで、動物に興味を持ってもらう入り口です。

小菅氏 「レクリエーション」はそもそも、人間性を再創造する場を意味する言葉です。その本来の意味で円山動物園が「レクリエーション」という言葉を使い始めたのはいつからでしたっけ。

加藤氏 昨年、2050年までのビジョンを作った時ですね。レクリエーションというと娯楽と思われがちですが、動物園は教育の場でなくちゃいけません。

小菅氏 教育って、学校だけのものではありません。社会教育、生涯教育もある。大人も楽しい、興味をひかれるような動物園になるには、スタッフによる語りかけが必要です。だからスタッフは、ものすごい知識量が求められます。

――円山動物園ではスタッフの「プロ化」を加藤園長が始めたんですよね。

加藤氏 昨春で全員、切り替わりました。大学や専門学校などできちんと学んだ人か、そうでなければ勉強して試験に合格してもらいました。

小菅氏 動物園は都市の顔ですよ。その都市のセンス、科学技術、財源などがすべて凝縮されています。例えば円山動物園のゾウ舎。ここではゾウに餌を漫然と与えるのではなく、ゾウ自身に穴を掘って餌を探してもらうんです。

――動物園は進化しているんですね。

加藤氏 研究活動にも力を入れています。今はオオワシの繁殖技術を確立しようとしています。市民と一緒に、コウモリの調査もしています。動物園は園内で動物を展示しているだけではダメ。教育、研究など、フィールドはどんどん広がっています。

小菅氏 僕はニホンザリガニの繁殖研究をしています。子供の頃はいっぱいいましたが、環境の変化で、ほとんどいなくなってしまった。

加藤氏 円山動物園ではニホンザリガニを繁殖させて、札幌市内の全小学校に配ろうと考えています。でも、なかなかうまく繁殖できなくて。

小菅氏 これこそが本当の環境教育ですよ。

都市生活で失ったアイヌ民族の自然観

――生物多様性の思想は、アイヌ文化にも通じます。人気漫画「ゴールデンカムイ」の影響もあって、若者の間では最近、アイヌ文化への関心が高まっています。

小菅氏 アイヌ民族の自然観は僕ら和人とは違います。例えば動物の名前のつけ方。アイヌの人たちは動物の生きている姿を見て命名しています。エゾリスを指すアイヌ語は、木陰にちょろちょろ隠れて私たちをだます生き物という意味をもっています。骨格などを見て、リスの仲間で、北海道にいるから「エゾリス」というのは博物館の発想です。アイヌ文化への関心が若者の間で高まっているのは、都市で暮らす我々が失ったものへの憧れがあるのでしょうね。

――これからの動物園は、どうあるべきでしょうか。

加藤氏 生物保全の場であることをもっと発信していくべきです。動物園とは何か、札幌市では今後、条例をつくって明確にしようとしています。国の法律では動物園の明確な定義はありません。動物愛護法では第一種動物取扱業者、ペットショップやサーカスと同じ扱いです。市の条例では動物園を、教育、研究などの機能を備え、動物の福祉に取り組む施設と定義します。

小菅氏 種の保全、環境保全を進めるには国との連携が欠かせません。オオワシの研究をするには、国を介してロシアと話をしなければなりませんし。

加藤氏 円山動物園で今、目指しているのはホッキョクグマの研究です。カナダのマニトバ州と協定を結ぶ交渉をしていて、近く締結する運びです。野生のホッキョクグマが生息するマニトバ州には、独自の飼育基準があります。円山動物園もその基準で飼育しながら、現地の環境保全活動への協力や共同研究を検討しています。きちんとした関係を築けば、ホッキョクグマを買ってくるのではなく、野生で保護されたクマを譲り受けられるようになります。

小菅氏 それこそが、これからの動物園のあり方なんです。動物は国を代表する大使なんですよ。動物を譲り受けておしまいではなく、現地の環境保全活動にも協力する。動物園の役割というのは時代時代で変わっていくものなんですよ。

小菅正夫(こすげ・まさお)
 1973年北海道大学獣医学部卒、旭川市旭山動物園に獣医として入園。95年園長。「行動展示」で動物園ブームに火を付け、2006年度に入園者300万人突破。09年名誉園長、10年退任。北海道大学客員教授、札幌市環境局参与。72歳
加藤修(かとう・おさむ)
 1989年北海学園大学経済学部卒、札幌市役所に入庁。財政や市民自治推進担当、広報課長などを経て、2016年円山動物園長。全職員を「プロ」化し、円山動物園の長期ビジョンなどを策定。北海道博物館協会副会長。53歳

(聞き手は永井伸雄、久貝翔子)

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