ヒトに見えない色も感知 ハチドリの目に映る世界

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

色覚の実験が行われた米コロラド州の現場に飛んできたオスのフトオハチドリ(PHOTOGRAPH BY NOAH WHITEMAN, UNIVERSITY OF CALIFORNIA, BERKELEY)

オスのハチドリは、ただ木の枝にとまっているだけで、そのカラフルな虹色の羽毛でわたしたちの目を楽しませてくれる。ただ人間には、ハチドリのようには、その羽毛の美しさを完全には堪能できていないだろう。というのも、新たな研究で、ハチドリには人間には感知できない色を見る能力があることが判明したからだ。

以前から、鳥はヒトよりもすぐれた色覚を持っていると研究者は考えてきた。多くの霊長類と同様、ヒトの色覚は3色型だ。これは、「青」「緑」「赤」の3つの色覚受容体(これを錐体=すいたいと呼ぶ)を持つことを意味している。一方で、ハチドリを含めた鳥類は、4種類の錐体がある。つまり4色型色覚なのだ。

3種類の錐体を持つヒトの目で感知できるのは、赤、橙、黄、緑、青、藍、青紫(バイオレット)の「虹の色」――いわゆるスペクトルの色相を見ることができる。ヒトはこのほかに、「非スペクトル色」(虹に含まれない色)の一つである赤紫(パープル)も認識できる。ちなみにパープルは、赤と青を認識する錐体が同時に刺激されて見える色だ。

一方、鳥の4種類の錐体は、理論的には紫外スペクトルを含む、より広い範囲の色を識別することができると考えられてきた。ただ、実際に鳥たちがどんな色を見分けられるかに関する詳しい実地調査は、これまでほとんどなかった。

米プリンストン大学の進化生物学者メアリー・ストッダード氏らは、コロラド州のロッキーマウンテン生物学研究所周辺で、フトオハチドリ(Selasphorus platycercus)を使った野外実験を行った。その結果、ハチドリはスペクトル色の給餌器と、非スペクトル色の給餌器とを識別できることが分かった。

「ハチドリが給餌器を見分ける様子を実際に目の前で見るのは、本当にエキサイティングな体験でした」。こう語るのは2020年6月15日付で学術誌『米国科学アカデミー紀要』に論文を発表したストッダード氏だ。

シカゴ大学の進化生物学者トレバー・プライス氏は、「この研究は『大きな前進』であり、鳥が色を見分けている方法について詳細に提示している」と述べている。

「動物の色覚に関する理解は、ようやく進み始めた段階です」

過去にない大胆な実験

ストッダード氏のチームが行った実験はこんな具合だ。研究室の近くに、LED機器を備えた円筒形の給餌器を数個設置する。それぞれの給餌器には、砂糖水と水が入っている。入っている水の種類に応じて、LED(発光ダイオード)機器の照射で給餌器表面の色を変える。

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