日光浴びないと近視進む? 子どもに外遊び推奨の国も快適な「視生活」を目指そう(上)

日経ヘルス

(イラスト:進藤やす子)
(イラスト:進藤やす子)
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無意識のうちに目を細めたり、手元を離したり……そんなしぐさに年齢を痛感する人も多いはず。人生100年時代、見えにくさを我慢していると楽しみも半減。今回は近視の原因や治療法に関する最新情報を紹介する。

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視力低下の大きな要因の一つに近視の進行がある。中でも極端に進んだ「強度近視(※)」は、失明につながる眼疾患のリスクを高めることが国内外の研究でわかってきた。子どもに限らず、大人で近視が進むこともあるので、眼鏡が合わなくなってきた、という人は要注意。アジアを中心に近視人口は世界的に増加しており、世界保健機関(WHO)も懸念を表明。「軽い近視でも放っておかず進行させないことが大事」と慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授は警鐘を鳴らす。

(※)等価球面値が-6.0D(ジオプトリー)かそれを超えるもの、または眼軸長(角膜から網膜までの長さ)26.0ミリメートル以上(近視研究会診断基準より)

(図:三弓素青)

近視は遺伝と生活習慣などの環境の両方の影響が指摘されているが、「近年は後者の影響が注目されていて、特に外遊びなどで太陽光を浴びなくなったことが近視を進める大きな要因と考えられている」と坪田教授は説明する。

なぜ太陽光か。「我々の研究で、太陽光に含まれるバイオレットライト(VL、波長360~400ナノメートルの可視光。ナノは10億分の1)が近視の原因となる眼軸長の伸びを抑えることがわかった。近視進行の抑制に関わる遺伝子を活性化させることもわかっている」(坪田教授)。勉強などで近くを長時間見ていても、1日2時間以上外遊びをしている子どもは近視の割合が少ないという報告もある。

(グラフ:増田真一)

最近の建物に使われている窓はほぼ紫外線カットガラスで、VLも通さない。「断定はできないが、1日2時間程度は外に出るようにすると近視抑制に良いのではないか」(坪田教授)

(図:三弓素青)

近視になった目を元に戻すことはできないが、子どもなら、角膜形状をコンタクトレンズで矯正するオルソケラトロジーで、近視の進行を抑制することができる。外科的な矯正方法なら、「大人の場合、レーシックとICL(インプランダブルコンタクトレンズ)が現在の主流」とクイーンズアイクリニックの荒井宏幸院長と話す。前者はレーザーで角膜の形を変え、後者は眼内にレンズを入れる。「ICLはどこも削らず、万一不都合が生じた場合、レンズを抜くことができ元の目に戻せる。近視が強いほど、レーシックより見え方が良いとされる」(荒井院長)

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台湾やシンガポールでは、児童の外遊びを推奨する政策も

世界の中でもアジアは近視人口の増加が著しい。台湾では2011年から子どもの屋外活動を増やす取り組みを始め、2013年には屋外での体育の授業を週150分行うことを義務化。シンガポールをはじめアジアの一部の国でも、学校教育のカリキュラムに屋外活動の時間を組み込む動きが出ている。

坪田一男さん
慶應義塾大学(東京都新宿区)医学部眼科学教室教授。日本眼科学会指導医。慶應義塾大学医学部卒業後、ハーバード大学留学、東京歯科大学眼科教授等を経て2004年より現職。専門は角膜移植、ドライアイ、近視の治療と研究。近視研究会世話人代表を務める。
荒井宏幸さん
クイーンズアイクリニック(横浜市)院長。日本眼科学会専門医。防衛医科大学校卒業後、国家公務員共済組合連合会三宿病院等を経て1998年に開業。近著に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社+α新書)。

(ライター 福田[渡邉]真由美、構成 堀田恵美)

[日経ヘルス2020年2月号の記事を再構成]

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