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答えと解説

正解は、(2)カンピロバクターです。

細菌性の食中毒といえば、O157に代表される病原性大腸菌を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、細菌性食中毒の発生事件数の割合(出典:厚生労働省)を示した平成8(1996)年と平成28(2016)年のグラフを見ると、2016年はカンピロバクターが圧倒的に多く、一方で、1996年に最も多かったサルモネラ菌や、2番目に多かった腸炎ビブリオの割合は低下しているのが分かります。一般によく知られているO157などの病原性大腸菌の割合はわずか4.2%です。

1999年まではサルモネラ菌と腸炎ビブリオが細菌性食中毒の原因菌トップ2だったが、その後、その2つによる食中毒件数は急速に減少。2004年以降はカンピロバクターが圧倒的多数を占めるようになった。※食中毒発生状況(厚生労働省)を基に作成

多くの人にとっては、病原性大腸菌の一種である腸管出血性大腸菌O157による食中毒の方が、カンピロバクターに比べ、ニュースなどで見聞きする機会は多いでしょう。それは、「O157は10~100個程度のわずかな菌量でも発症するので、大規模な集団食中毒を起こしやすいからです」と、がん・感染症センター東京都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんは言います。しかし、事件数としてはそれほど多いわけではありません。

「サルモネラ菌による食中毒は、サルモネラ菌が多く見られる卵に賞味期限を記載するようになったことで減ってきました。また、腸炎ビブリオは塩分を好む菌で、以前は魚に多く見られました。しかし、冷凍技術や搬送方法の進歩などによって、今ではほとんど見られなくなっています」(今村さん)。

それらに代わってカンピロバクターによる食中毒の割合が上昇し、2004~05年以降は細菌性食中毒の大半を占めるようになりました。

市販の鶏肉の2~6割に付着

カンピロバクターによる食中毒は、原因の多くが鶏肉です。その理由は、この菌はニワトリの腸内に特に多く存在しているため、食肉に加工する段階で汚染されてしまうからです。

「一般に市販されている鶏肉の約2~6割は、カンピロバクターに汚染されているという調査報告が多くあります。ですから、『鶏の生肉のほとんどには、カンピロバクターが存在しているもの』と思っていただいた方がいいでしょう」(今村さん)。

また、この菌は低温にも比較的強いため、冷蔵庫に入れていても、菌が死滅することはありません。増殖が抑えられているだけで、冷蔵庫から出して時間がたてば、菌はまた増えていきます。高温多湿となる梅雨時から夏にかけては、短時間で菌が増えてしまうので、特に注意が必要です。

「まず、鶏肉を生の状態で食べる鳥刺しは、感染のリスクが高いことを覚えておいてください。たとえ新鮮な肉だとうたっていても、『新鮮=安全』というわけではありません」(今村さん)。

鳥刺しでも、表面をあぶっていたり、湯通ししたりしているものもあり、生のものに比べれば、感染のリスクは低いといえます。ただ、その場合でも、軽くしか火を通していなければ、菌が完全に死滅しているわけではないので、感染するリスクはあります。

カンピロバクターは基本的には、肉の表面に付着しているので、表面をしっかりと加熱してあれば問題はありません。ただし、その肉を、生肉を扱った包丁やまな板をしっかり洗わずに使って切ったりすると、切り口に菌が付着してしまうので、注意が必要です。

(図版作成:増田真一)

[日経Gooday2020年6月8日付記事を再構成]

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